「あ、ねえこんなのいいんじゃない?」
「そう?」
「すっごくよく似合う!かわいいかわいい」
「ありがとう」
「それからこれ!これとこれを合わせたら…ほら!ぴったり」
「ねえ、洞面」
「何ー?」
「私たち、何でこんなことしてるの?」

今私と洞面のいる場所は高級感漂う洋服ブランド店。しかも女の子向けのブランドな為、洞面は正直店内で浮いた存在である。いくら小さい体といえど、有名な帝国学園の制服を身につけていれば中学生にしか見えない。

「あれなんかもいいんじゃない?」

私は今日、珍しくサッカー部が練習をしない日曜日だからと、新しいドリンクの製作に役立ちそうな材料などを色々調べるために街へ出た(正確には出ようとした)というのに。朝起きたら洞面がうちのリビングで朝食を食べていて、それから強引に一緒に行動させられているのだ。まず朝食をうちで食べていること自体おかしい。肝心のお母さんが、「洞面くんかわいいから」と癒された感いっぱいに言ってくるから、断るに断れなかった。洞面のその時のしたり顔が忘れられない。
私の言ったことを無視して次々と洋服を物色していく洞面にさすがにいたたまれなくなって、洞面の腕を掴んで店外へと飛び出した。不満そうに唇を尖らせる洞面に、母親になったつもりで、街へ出てきた目的を言い聞かせる。

「今日私はみんなのドリンクを改良するために来てるのに、こんなことしてたらせっかくの休日が無駄になっちゃうでしょ」
「せっかくの休日だからこういうことするんじゃないの?」
「洞面はそうでも私は違うよ」

色気ないね。洞面は私を苛つかせることを言った。「最初から色気も何も持ってません。私は帝国サッカー部のマネージャーです」「マネージャーがこんな子だなんて、僕たちはかわいそうな子だなぁ」「それどういう意味?」口論になりかけているのを察知したのか、洞面は周りの店へと目移りさせながら会話を閉じた。

「あそこの店そうじゃない?」

スカートの裾をぐいと引っ張って、洞面は数メートル先の突き当たりの店を指差した。私は途端に笑顔になる。私の探していた店だ。何だ、何だかんだ言っても洞面は私の買い物に付き合ってくれているじゃないか。でもここで褒める言葉一つでも使うといい気になってしまう。

「ありがとう。まあ私も見つけてたけどね!」
「何それ。ツンデレ?」
「違う!」

ずんずん進んでいく私の後ろで、洞面が何を考えていたのかなんて全く知らないし、知りたいとも思わない。

(僕はドキドキしてるんだけどな)

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