口数が少ないのは彼だからであって、決して上手くいってないとか、倦怠期だとかではない、決して。そんなべたべたするのは好きじゃないし、彼も私と同じようだ。はたから見ればドライな関係であろう。彼氏といちゃいちゃするのが好きな友達に掴みかかりそうになったのはつい先ほどのこと。

あんたが思ってるほど、あっちはあんたのこと考えてないよ

それは単なる決めつけだ、それに彼が言っていたという証拠も無い。しかし私は友達に反論出来なかった。私の方だって、友達が言ったことがまるで違うとは言い切れない。私は静かになってしまった。幸い追い打ちはかけられなかったのだが、意外にもその一言は私を悩ませた。放課後、彼と顔を合わせたくはなかった。それは何故か。理由は、今ちょうどその件で複雑な気持ちなのと、彼の勘の良さ(今回ばかりは厄介にしかならない)にある。

「何を悩んでるんだ」

彼は観察眼でも持ってるかのようだ。一目見られただけで見破られてしまった。言えるか!と返事はせずに黙ってみる。彼、豪炎寺は私をずっと見つめるも、微塵も追及をしなかった。どちらともなく歩き始め、気まずい空気が流れだす。他愛無い話の一つも浮かんでこない。いつも何を話していたっけ。

(あんたが思ってるほど、あっちはあんたのこと考えてないよ)

「…?」足が前へ進むのをやめた。「どうした?」そうだ、悔しいんじゃない、この気持ちは――

「…ご、えんじっ……」

不安なのだ。友達が、私の心の深い場所にあった感情を言い当てたから、動揺して、一気に焦燥に駆られ、不安となって私を包んだのだ。抗う術も根拠もなかった。許容範囲を超えて涙となって表に出た思いを、豪炎寺は指で優しく拭う。彼は笑っていた。ふんわりとした笑顔だった。私が言うより先に豪炎寺が口を開いた。「風丸からきいた」「…え?」「昼休み、友達に変なこと言われただろ」ばれて、いた。頷くのをためらい、伏し目がちになる。豪炎寺は涙を拭いていた手で私の頬をなぞり、肩に置いた。次の瞬間には抱きしめられていた。

「ごうえん…じ?」
「オレはちゃんとお前が好きだ」

「いいか、これだけは言っておく」私を抱きしめる腕の強さはそのままに、頭の後ろの方で声が響いた。

「お前のことを考えない日なんてない」

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