珍しくからりとした晴天の日、わたしと彼はちょっと遠出をした。食べ物を崩したのを入れた飲料ゼリーを持って、人のいない道を二人で歩く。この前の雨の日から、外に出る人がめっきり少なくなった。きっとこの前の争乱を恐れているのだろう。あの時は運が良かったのだ、国会議員ともなれば、国民よりずっといい武器を持っているはず。あのあと、血まみれの議員からは、拳銃が押収されなかったのだから不思議に思う。と同時に、恐怖を感じた。拳銃と叩き棒。どちらがいいかなんて明瞭である。

「着いた!」

わたしが足を止めると、前を歩いていた彼も歩みを止める。周りを詮索して、彼は不満げに事を洩らした。「何もねえじゃん」

一面にごみ。しかしこのごみは人為的なものである。焼け野原のあとに棄てられたごみも、今では年季が入っていて個々本来の形を表していない。そう、ここは焼け野原なのだ。その何の変哲もない場所に彼を連れてきた。彼にとっては特別な場所である為に。

「あきお、わたしはここであなたを拾ったんだよ」

彼は目を丸くして口を結んだ。初めて知る真実であった。
わたしは彼に隠してきた、彼がまだ幼かったからというのもあるが、“捨てられた”ことが根を張って彼の心底に潜んでいたことが大きかった。幼いなりに自分が捨てられたことを理解し、そして一度絶望を味わった彼を“拾った”のは紛れもないわたし、そのわたしを、一度彼の家族という枠組みから外してもらうのが目的だった。彼は案外呆気なく外してくれた。

「知ってるっつーの。おれは、お前と本当の家族じゃねえ」
「……そうだね」
「拾ってもらった時ついてったのは、腹減ってたから、それだけだ」

さあ、ここを再出発の地としよう。

「あきお」
「……」
「今からわたしは、あなたと家族になるためにここへ来ました」

ボンベ越しの声は、曇らずに彼の耳へと届いた。彼は感情のある無表情で、わたしをどこか安心させる。わたしの思うように育ってくれなかった彼だけど、彼はわたしよりずっと幼い。家族の温かさに触れたいはずだ。

「今までよりもっと深く繋がれた家族になろう」
「……本当の…家族になれるのか?」
「…うん。そうだよ」

彼は俯いてしまった。彼の頭をゆっくりと撫でると、その手を彼に掴まれた。顔は下を向いたまま、彼はもごもごと口に出す。「家族ってのは…守るもんなんだ」とどのつまり、「わたしのこと、守ってくれるの?」

「お前はおれの本当の家族になった。おれはこれからお前を守る。……義務がある」

別に義務付けて誤魔化さなくてもいいよ?うっせえ!彼はいきなり顔を上げるとずんずんと歩き出した。帰ろうか。腹減ったからな。今日は何食べたい?コンビニ弁当。真昼間なのに人とすれ違わず、太陽が顔を出さない今日、わたしたちは“家族”になった。

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