放課後、女の子に連れられて広いグラウンドに来た。私たち以外にもたくさん女の子が集まっている。何だろうと考える間もなく、その理由がすぐに分かった。

「かわせ!」
「パスこっち!」
「いけ、シュートだ!」

ボールを蹴る音が響いて、力強くゴールネットが揺らされた。その時女の子たちが歓声をあげる。口々に叫ばれる言葉、マーク。私を連れてきた彼女がキャプテンの名前なんだと教えてくれた。

「サッカー?」
「そう、うちのサッカークラブから二人、アメリカ代表に選ばれたの!」
「代表って、今年開催される世界大会の?」
「そうよ!」

ディラン!誰かがその名前を呼んだ。私は首を動かし、目の色を変えてグラウンドを凝視した。今、ディランはサッカークラブに所属している。今でも星が好きなのかは分からないが、私の強い希望でここの学校に通わせてもらうことが出来た。この町に戻れると知った時から、ここの学校に通うことを強く願っていた。ディランがいる。またディランと仲良く出来る。その一心で学校に来たと言っていいくらい、私は再会を楽しみにしていた。

「ねぇ、ベンチの所まで行っちゃだめなの?」
「だめよ、練習中だもの」

女の子には、練習中は集中力を切らしてはいけないと聞かされ、一人がベンチまで行けると他の子たちもみんな詰め寄るから迷惑になるとのことだった。今日は遅くまで練習があるから終わるのを待つことが出来ない。仕方なく帰路につこうとした、その時だった。

「ちょっと待って!」

背後で私に掛けられた声が聞こえた。少し周りが静かになって、私はゆっくりと声のした方を見る。ベンチでドリンクを飲むユニフォーム姿の集団の一番前に立っている男の子。

「もしかして……名前…?」

この町だけではなく、面影は彼にもしっかり残っていた。特徴的なゴーグル、遠くからでも分かるさらさらの金髪、そしてなにより私を呼んだ声。間違いなかった。

「ディラン…?」

「名前だ!」ディランが私の方へと駆け出して来るのと同時に、私もディランに駆け寄っていた。十年ぶりの再会だ。それなのにディランは私に気づいてくれた。嬉しくて、手をいっぱいに広げて抱きつこうとすると、ディランは走るのを止めた。ぎりぎり届かない。私が手を下ろし一歩進むと、私の手を取って上下に振った。

「久しぶり!!本当に久しぶり!!」
「ディラン、どうして私が分かったの?」
「いつも応援してくれる女の子たち以外に新しい子がいるなって思ったからさ!」
「私、昨日この町に引っ越して来たんだよ!」
「Wow!それはいいことだ!」

変わってない、変わってない。気分が高揚している時の抑揚ついた話し方とか、手の温かさとか。あまりにも嬉しくて涙が出てきた。驚いた顔で私の頬を慌てて擦るディランに、精一杯の笑顔を送った。

「ただいま、ディラン!」

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