両親の都合で私は引っ越した。その時私はまだ四歳だった。ここからは百キロ以上離れた土地で、四年の馴染みのあった土地とはおさらばになった。四歳。いくらかの友達もいて、引っ越しの日にはみんな泣きながら私の出発を見送ってくれた。私も泣いた。みんな泣いてた中で、一人だけ泣かずに、私の頭を優しく撫でて額にキスをしてくれた子を、私は忘れていない。
兄弟を通り越して恋人と言える仲であったと今は思う。四歳同士の恋人なんてかわいいちゃちなものだけれど、私たちは精一杯だった。まだ恋人らしいことを知らなかったあの頃、夜に家を抜け出して、町で唯一の丘を目指して走っていた。星を見るために。家にある星座の本を持ち寄って(今考えれば一冊で十分だった)、月の明かりでそれを覗いて星を探した。だけど二人とも文字が読めなかったから、正しい星座の名前は知らなかった。夏の大三角はさんかく、さそり座はむしだった。オリオン座は、真ん中の星を見て――。

(…私の、だったかな)

星座の本は新しく買うこともなく、私の荷物の中に大事に入っている。揺れる車内から外を見た。もう四歳の頃の面影はない。それでも、私はこの町がどこよりも大好きなのだ。

あれから十年、私はこの町に帰ってきた。

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