断られるジャンルカ
※キャラ崩壊






「ごめん」

オレは確かにそう断られた。ごめん。ごめんってこの場合どういう意味合いで使ったんだ…?とオレの脳がログアウトする前に、名前は詰まり詰まり声を出した。

「そ、その日は…えっと、別の用事があって、だから…行けないんだ。ごめん」
「い、いや、いいんだ、オレの方こそその、急に誘ってごめんな」

来週の日曜日に遊園地行かないか、そう誘ったのはついさっき。名前に早くも断られてしまった。急だったから、予定があるのは当然のことだ。だけど、その日の練習の合間にオレはアンジェロから聞いてしまった。「名前?さっき訊いたら来週の日曜日は空いてるって言ってたけど。だから一緒に雑貨屋さん行こうって約束したんだー」

き、聞いてない!名前は、名前はアンジェロと休日を過ごしたいから、彼氏であるオレとのデートを、断った、のか…?「どうしたのジャンルカ、顔が怖いよ。泣きそうな顔なのに何だか怖いよ」

「アンジェロォォ!!」
「わっ!?」

わけを事細か(名前の表情や声の調子など)に話せば、アンジェロは何か知っている素振りだった。あーそれは名前も言いにくいよね…と目をきょろきょろと動かす。……オレより名前のことを理解しているだと…?

「ジャンルカー、遊園地じゃなくて別の場所誘ってみたら?」
「駄目だ嫌だ!オレは遊園地に行きたいんだ!」
「頑固だね。名前はきっと遊園地は嫌なんだよ。だってほら、二人で観覧車なんかに乗ったら…」
「オレとキスしたくないって言うのか!?名前はオレと唇を重ねる行為が嫌だというのか!?」
「描写細かくなくていいから!!それに観覧車乗ったらするつもりだったの!?」

はっ、とアンジェロが口元に手を当てて目を丸くした。オレと視線は合っていない。…後ろ?

「…じゃ、僕はここで」
「な、おい!何で帰るんだよ!」

アンジェロの首根っこを掴む前に、アンジェロは遥か遠くへと逃げてしまった。その逃げ足の速さをサッカーに活かせたらいいのにな。「ジャンルカ?」それにしても、何で名前はオレと遊園地行くのが嫌なんだろう…。「ねえジャンルカ?」やっぱりオレとキスしたくないからか?「ジャンルカ」でもオレたちは恋人同士だぞ!?「ジャンルカ!!」

「わっ!?」
「何回も呼んでるのに」
「ご、ごめん」

しまった今の話聞かれたかも。アンジェロが逃げたのも、名前が後ろにいたからか。一人納得する。え?じゃあ名前はどこから話を…。

「…なあ名前、今の話…どこから聞いてた?」
「……ジャンルカが嫌だって言ってる辺り…」

き、キスー!!

「あ、えっと、名前、これはその、えっと」

必要以上に口ごもる。名前が恥ずかしくなるような言葉はたくさん言えるのに、言い訳は口から出てくれない。思考だけがこんがらがってきて、どっと熱が出た。顔が熱い。そのくせ冷や汗が絶えず流れてくる。オレの自律神経はどうにかなってしまったらしい。

「…私がジャンルカと遊園地行きたくない理由はね」

名前が俯いてぼそぼそ呟き始めた。内容も内容なだけに、聞き逃さないよう耳を澄ませる。「ジンクス、聞いたことある?」

ジンクス?眉がひそむ。首を振って否定の意を表す。名前は頬を赤く染めた。

「あのね。カップルであの遊園地に行くと、必ず別れるっていうジンクスがあるの」
「…は?」

ますます頬が赤くなる名前を前に、オレは無表情を貫いた。無表情とは少し違うか、間の抜けた顔。擬音語で言うと、ぽかん、だな。そんな顔で名前を見ていると、羞恥の頂点に達したらしい名前が瞳に涙を溜め始めた。

「…そんなの気にしてたのか?」
「ごめ、ジャンルカ、だからジャンルカと行くのが嫌だからとかじゃなくて」
「なんだよー」

足の力が抜け、その場にしゃがみ込んでしまった。救われた気がした。

「オレと遊園地行くのが嫌なのかと思った…」
「ごめん、ごめんね」
「分かったから泣くなよ。可愛い顔してるのに涙でぐしゃぐしゃになるだろ。それに」

言葉を止めたオレを、しゃがんで不思議そうに見る目元に唇を落として、強く抱きしめた。






user
気持ちは十分つたわったから

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