掠れ声マルコ






「何を考えてたの、」

静かな空気が震えた。ろうそくの火は揺らぐことなく赤々と細い炎を灯している。今何時なのだろう、確認したくてもこんな静かな夜だ。周りは真っ暗で、壁の時計の針なんか見えやしない。その暗さに甘えて、私は目元の涙を拭った。

「何でもない」

背中のマルコの存在が大きい。素肌が触れ合う感覚はどうも慣れないが、マルコにはどうでもいいことだろう、今は。彼は、私を抱きしめたい以外に目的がないから。うなじに赤毛の触れる気配がした。

「一人で泣かないでよ…不安になる」

知ってるよ、いつも夜に泣いてること。「マルコ、」マルコはずるい。そうやっていつも水底に沈む私を掬い出す。濡れている私の前髪を払って、それでいてそこに無音のキスをする。君にはオレがいる、というように。その優しさと切なさを、私は腹に宿してしまうのだ。もうずっと私のもの、マルコはそれが嬉しいと言う。

「夜が、こわいの」

マルコの腕に力が入った。腹部に絡む指が、臍の辺りをゆっくり弧を描くように動く。夜は、永遠に続く闇を与える。その闇の中で人と人が愛し合う、とはすごく恐ろしいこと。何も見えない。相手も見えない。就寝にろうそくを外さないのは、私は闇が怖いからだ。人為的でない点が、すごく、すごく恐怖に思える。マルコは言った。

「オレだって、こわいよ」






まるむ

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