初恋






ディランに出会う前はストリートバスケをしていた。サッカーには微塵も興味が無かったし、オレ的にはボールを足で触るより、手を使ってネットを揺らす方が気持ち良いと感じていた。中学に入って、偶然同じクラスになったアイマスクの男の子に「サッカーやらない?」と声をかけられるまで。
ディランは、バスケの練習に行こうとするオレを半強制的に自分のチームへ連れて行った。ストリート同士のバスケが二日後に試合を控えてる日、オレはサッカーに出会った。初めは全然乗り気じゃなくて、バスケの試合が控えてる、と何度も訴えたにも関わらず、サッカーの見学を強引にすすめてきたディランに苛立ちさえ感じていた。サッカークラブのチームメンバーがオレを見る。ディランがオレを紹介した。

「ミーの親友のマークだよ!サッカーやりたいって言ったから見学も兼ねて」
「ちょ、待てよ!」

「何だい?」と言う声は無邪気に耳に響く。天然なのか策士なのか、オレには見当がつかない。

「オレはお前と親友でもないし、サッカーがやりたいなんて一言も…」
「あーはいはい!そういうのは後で!ほらユニフォーム着て!Let's play soccer!!」

この時オレは思ったのだ。ディランとは絶対仲良くなれないと。






そんなオレがサッカー一筋になったのに、そう時間はかからなかった。やればやるほどのめり込んでいった、ディランやバスケの仲間も驚くほどだった。めきめき上手くなる、とはこのことだろうか、気づけばオレはキャプテンとなりチームユニコーンを率いていた。このチームはアメリカ選抜チームだと監督は言う。これから、お前たちは世界で戦うのだと。

世界で戦うと決まった瞬間、バスケの仲間はオレを酷く祝福してくれた。謝るな、とたしなめられ、試合見に行くから、と興奮気味に言われた。バスケは、ここで諦めることとなった。

「ごめんねマーク、ミーがサッカーに強引に誘ったから…」
「いいんだ、ディラン。バスケを好きな気持ちがあるし、仲間とはこれからも仲良くしていける。今では、何でもっと早くサッカーを知らなかったんだろうって悩むばかりさ」

ディランは歯を見せて笑い、オレも声をあげて笑った。そしてがっしりと手を組んだ。言うことは一つ。

「絶対に世界に行こう!」
「ああ!」






隣の州から珍しい転校生がやって来る。その噂を耳にしたのは、練習で布切れのようになったオレたちユニコーンの監督だった。ディランはそれまでくたくたに芝生に伸びていたのに、その話をきいて真っ先に体を跳ね起こし監督に訊いた、「女の子!?」質問の内容が容易に想像出来たのはオレだけかな。

「マーク!女の子だって!きっとキュートなガールだよ!」
「あーはいはい、分かったから片付けやるぞ」
「マーク興味無いの?」

無いよ、と困り顔で微笑めば、ディランは膨れ面をしながらもボールを拾いに行った。ディランはガールフレンドをたくさん持っている。女の子と話しているディランはとても楽しそうだ。色々な情報が交換出来るから楽しいよ!と、前に言っていた気がする。それじゃあ明日はきっと転校生がどのような子か、正確に情報を仕入れてきそうだ。ディランは陰で情報屋として知られている。情報も正確で、どこでどう取捨選択をしているのかオレにはさっぱり分からない。専らオレはディランの纏めたデータを聞くしかない。

明日は騒がしくなりそうだ。

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