とりあえず彼にプレゼントしようと思った紙は完成させた。もう必要ないその紙を、わたしは机の引き出しにそのまま大事にしまった。もしかしたら渡す時が来るかもしれないじゃないか。わたしはまだ諦めていない。
彼は本気でわたしと別れた。次の日廊下であってもわたしをちらとも見なかった。話しかけても口を聞いてくれなかった。その後彼のファンの子たちに「何、照美くんに馴れ馴れしく話しかけてんのよ」と集団暴行され、気付いたら鴉の鳴く放課後、綺麗な夕焼けの時間帯だった。乾いた舌で鉄を舐める。

彼のメールアドレスは訊かなくて正解だったのかな、わたしには分からない。誰に訊いたって分からないだろうから、この問題は自分の中で消化しよう。本当は泣きたい。彼のことは大好きだった。今も。だけど、彼がわたしを拒絶した。それはわたしには変えられないどうしようもないことで、わたしはそれを享受するしかないのだ。彼がわたしとの関係を紡ぎたくないのなら、わたしはそのことを鵜呑みにする努力をするべきなのだ。虚しくなんかない、と思いたい。






数日後、彼がとある事件を起こした。わたしはすっかり立ち直っていた。どうやら同級生と喧嘩をしたようである。非常に珍しいことだ。激しい喧嘩だったらしく、彼が激昂して同級生の顔を殴り、同級生も負けじと彼の腹に渾身の力を込めて蹴りを入れた。お互い床に崩れて喧嘩は自然消滅するが、相手の同級生はしばらく彼のファンから激しい非難と暴力を受けることになったのは気の毒だ。ある意味彼の最強の盾といえる。
わたしには友達がいないから、これは廊下で人とすれ違った時に小耳に挟んだ話。どうやら彼は誰かを貶されたので怒ったようだ。彼であればするだろうな、とわたしは考えた。彼はああ見えて友情を大切にするし、サッカー部の仲間を家族同然だと言い切る。しかし貶されたのはサッカー仲間ではないのは噂で流れていた。彼は学校のアイドル的存在だから、彼のプライベートはほぼ筒抜け、血眼でその情報をえぐり出そうという姿勢を見せるファンを見て、わたしは朧気に確信した。貶されたのは、彼と同性ではない。

 

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