結果を言えば、彼とわたしはよりを戻した。以前は隠れて付き合っていたが、この前初めて手を繋いで登校した。周りやファンの子はすごく驚いていたけど、言われたのは祝福の言葉で、もらったのは温かいを超えて熱々の拍手だった。彼もわたしも顔を赤くしたり恥ずかしがったりすることはなかった。二人揃って誇らしげだった。そういう性格なのだ。






彼は疲れた表情をやめなかった。わたしは受信することをやめなかった。もう何も知ることはないと思いながら、そのふりをして彼に送信していた。わたしだって言いたいことがあるのだ。彼ばかりずるい。わたしが好きなら、この気持ちを分かって欲しい。

彼は受信してないようだった。

「建て前はもうやめにしよう。率直に言って、僕はまだ君が好きだ。もう一度、僕の隣で歩いてはくれないか」

その偉そうな態度の裏に弱音が隠れているのをわたしは確かに受けとめた。もうこれで最後らしかった。彼はわたしから返事が来るまで黙るつもりなのだろう、口を噤んで空気に溶け込むようにしてそこに存在していた。わたしが彼をどうこう出来る立場に立った。わたしが嫌だと言えば本当の本当に関係は終わる。終わって、彼はどう生きるつもりだろう。彼の中で大きくなったわたしが、彼によって虚像となり女神となり偶像崇拝の対象となっても、わたしには何の関係も無い。そんなものだ人間は。

「わたしは」

単調に言った。彼は動揺もせずにわたしを見つめ抜いた。わたしの出した答えによっては、彼は幸か不幸に、天に昇った人間か地に堕ちた神になる。彼は人間がいい。

「照美くんのこと、多分ずっと好き」

「多分?」呆れた物言いで返されたが、わたしはもう何も言わなかった。彼の声が上擦ってても、彼の頬が緩んでても、わたしに近づき抱きしめても、これ以上言わなくてもいいと解いた。彼もそうであった。帰り、お互い一言も話さず無言だったのは、すでに以心伝心の出来るわたしたちだからこその一種のコミュニケーションで、彼も勿論それを十二分に理解していた。






「幸せってどんな形をしてると思う?」あれ以来彼の質問は愚々なものへと変化した。くだらなくて彼の目の前でため息をしても、彼は毎回わたしに訊いてくる。ふざけてる、とメッセージを送った。彼は分からなかった。だからわたしは、面倒に思っても声に出す。彼が電波族だったら良かったのに、それだったらわたしにとって完璧な人だったのに、人間はどこかしら欠けているから人間であって、彼の欠けてるところというのがずばりそこなのであった。わたしの言葉は空気を振動させ彼の耳に届いたはずだ。






わたしたちなんだよ
笑った顔がまたわたしを退屈にさせた。

 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -