豪炎寺はいつも私に対して何も言ってこないし、(というのも基本無口なクール屋さんだからね)キスは一回だけしたことあるけど、その先は望んでないみたい。じゃあどうしようかな、下着なんか買っても意味ないか、いやいやそんな豪炎寺でも、もしそういう雰囲気になったらどうするのだ。マイナスな考えを振り切り、ピンクの水玉の下着を手に取る。そのままレジへ向かいお金を払うと、私は店を出て真っ直ぐ家に帰った。






豪炎寺には性欲が無いのか。男と見せかけて実は女だったりして。まさか、あんなかっこいい女の子はいない。

「何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「や!何でもないよ、あははは」

あ、危ない危ない。今は豪炎寺といるんだった。デートってわけじゃなく学校だけどね。勝負下着を買って一週間、豪炎寺の家に行ったり、一昨日は私の家に呼んだりしたのに、豪炎寺はサッカーの話と妹の話をするばかりで、それらしい雰囲気にはならなかった。ちなみに今日はあのピンクの下着。気づいてくれはしないけど、私はとても機嫌がいい。あのあと家に帰ってまじまじと見てみたら、すごく可愛い下着だということが判明して、すっかり気にいってしまったのだ。だから着けてるだけで満足。これじゃ買った意味がないけど、だからといって無理やり行為をするのは嫌だ。

「何だか今日機嫌いいな」
「分かる?」
「あぁ。何かあったのか?」
「どうだろうね」

当ててみなよ。豪炎寺は小難しい顔で考え始めた。彼氏として、彼女の気持ちが分かる人間になりたいのか、随分真剣に悩んでいる。なんだか照れるなぁ。

「…ヒントは」

ヒントか。うーんどうしよう教えてあげようかな秘密にしようかな、でも私親切だから教えてあげようっと!

「ヒントは身につけてるものにあるかな」

言ってから後悔した。豪炎寺が私のことをまじまじと見つめてきたからだ。わ、すごく恥ずかしい。じろじろ、という効果音が似合うくらい私を見つめてきた豪炎寺は、何を思ったか鼻先がくっつくくらい近づいてきた。ちょ、恥ずかしすぎるんですが…!離れて欲しい…!!

「ち、近いよ」
「…下に着てる奴だな」
「へ…?」

いいい今豪炎寺なんて

「オレはお前のこといつも見てるから、外見の変化なんかはすぐ分かる」
「は、はぁ」
「だが外見に変化がない。となれば身につけてるものは他に」
「……下着」
「そうだ」

なんか自信満々に言ってるけど、この人こっぱずかしいこと言ってるよね。そして何故だかじりじり壁際に追い詰められているんですが、

「あの、豪炎寺さん?なんでそんな迫って…」

この時の豪炎寺の顔を、私は一生忘れることが出来ないだろう。

「どのくらい可愛いのか見てやる」

 

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