名前が襲われた、ときいた。強姦とかではなく、普通に暴力らしい。それでも入院まではいかなかったというのでとりあえず安心した。名前は今、今日最後の授業を受けているから僕はその間図書室で終わるのを待つ。名前は選択授業で僕より一時間授業が多いのだ。
チャイムが鳴った。僕は立ち上がって読んでいた本を本棚にしまうと、がらがらとドアを開け名前の教室へと向かった。名前が襲われてから「これからは僕が家まで送る」と約束したのだ、破るわけにはいかない。十メートルほど進んだところでドアを締め忘れたことに気づき、後ろを振り返ればちゃんとドアは閉まっていた。あれ閉めた記憶無いんだけどな。でも閉まってるからまあいいか。こんなの、よくある勘違いだ。

彼女は廊下に立って僕の来るのを待っていた。名前、と声をかけるとぱっとこちらを向き歩み寄ってくる。

「待った?」
「ううん、大丈夫。照美くんこそ大丈夫?」
「僕は全然大丈夫。さ、帰ろう」
「うん!」

彼女が襲われたのはつい二、三日程前の話。家の近くのコンビニに向かう途中いきなり後ろから羽交い締めにされ馬乗りになられ首を締められたそうだ。犯人は男で、その時抵抗して男の顔を引っ掻いたが、顔は夜だった為暗くて覚えていないらしい。なんとも都合の良い…と憂いたが過ぎたことは嘆いても仕方がない。警察に届けを出したのでもうじき捕まるだろう。僕が傍にいてやれなかったことだけが心残りだ。

「首、痛む?」
「うん。ちょっとね」

名前は薄く困り笑いを浮かべ僕に首を傾げた。
随分きつく首を締められたみたいで、見せてもらった時は痣がくっきり、人の手の形になっていたことを僕は脳にインプットしている。もし捕まった時は絶対に会いに行って、よくも!と怒鳴りつけてやろうと三日前に立てた誓いは未だ揺るがない。

「照美くん」

名前が口を開いた。顔は前を向いている。

「なんだい?」
「あのね、あの時気が動転してて、犯人の顔も特徴も覚えてないって言ったけど、本当は覚えてるの」

街中できく衝撃の事実だ。どうして今まで黙ってたのか不思議に思った。名前は、捕まって欲しくなかったから、と犯人を擁護する発言をし、僕は何故だ信じられないと返事をした。「警察には内緒だけどね、」


「私の首を絞めたの、ものすごい形相の照美くんだったの」


 

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -