家に帰ると、そのまま自分の部屋へ直行、ベッドに身を投げた。今日干してくれたらしいシーツと布団から、太陽の匂いが俺を包んで、なんだか懐かしい気持ちになる。
先程のいらいらは消えていて、自分は何にいらついているのだろうと逆に疑問に思ってしまった。あの子をマネージャーにしたこと?だとしたら何故だ?

「…くそっ」

佐久間の言葉が頭の中に蘇り、俺は腹いせとばかりに枕を壁に投げつけた。こんなに荒れるのは初めてであった。原因が佐久間ではなくあの子だったら、俺は明日からどんな顔で、態度で会えばいいんだ?






「あータオルはあっちの棚な。それで水筒はあっち」
「うん」

私は成神くんから部室の説明を受けていた。成神くんや洞面くんがいたおかげで、先輩たちにきちんと挨拶をすることが出来た。鬼道先輩は思ったより優しくて、私にマネージャーを勧めてくれた佐久間先輩も親切だった。マネージャーなんて初めての経験で、何をするのか分からない。家に帰ったら友達にきいてみることにしよう。成神くんがどうした?と私の顔の前で手を振った。

「あっ、ごめん」
「とりあえず物品の場所はこんなもんだな」
「ありがとう。頑張って覚えるね」

部室を出ると、外で洞面くんが待っていて、三人で帰ることにした。途中チャンバラをやっている小学生に出会い、それを見た成神くんがガキくせーと言ったのが似合わなくて笑ってしまった。(何笑ってんだよ!と怒られたけど)
マネージャーの仕事は上手くやれそうだった。






次の日、お父さんと一緒に電車に乗り帝国学園まで向かった。痴漢に遭ってから、お兄ちゃんやお父さんが私を駅まで送ってくれる。だから安心だった。改札を出ると、前を鬼道先輩が歩いているのが目に入った。意外だ。絶対毎日車で来てるのかと思ったのに。どうしよう、挨拶した方がいいのかな、でもまだ声かけづらいや、あぁでも…。悶々と考えていると、後ろからばしっと背中を叩かれた。あまり痛くなかったけど。

「よう名前」
「成神くん、びっくりした」
「わりいな」

わりいなと言う割には全然そんな素振りが無い。それが成神くんでもあるけれど、別に背中が痛むわけでもないから許してあげる。でもやっぱりちょっとむかついたから意地悪を言ってやった。

「今日ね、英語の先生が内緒で小テストやるって言ってたよ」
「えっマジ!?範囲何ページからだよ!!」
「教えてあげな〜い」
「あってめ!」
「まぁ嘘だけど。っていうか私と成神くんクラス違うしね」
「あっ…騙しやがったな!」
「引っかかる成神くんが悪いんだよ。あはは」
「てめえ!」

私は知らない。私たち二人の後ろを源田先輩が歩いていたことを。その日の練習は、成神くんがやけに源田先輩にしごかれたと聞いたけど、部室で物品の位置を覚えていた私はその様子を見ていなかったので、洞面くんにあとから教えてもらう形となった。


 

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