「え?名前のことですか?」

成神がその名前をなんの気なしに言った時は少し嫉妬した。俺の一つ下、ということは成神や洞面と同じ学年なことは分かっている、だがやはり少し…気になる。

「確か洞面と同じクラスだったと思いますけど」
「…そうか。仲良いのか?」
「えぇ、席替えで隣になったことがあるとかで。サッカーの話で気が合ったらしいですよ」

サッカー。あの子も好きなのだろうか。だとしたらすごく嬉しいし一気に親しくなれる気がする。何故か帝国にいることが誇らしくなった。

「でも何で名前の…あだっ!!」

成神は後ろから来た佐久間に肘で頭を小突かれた。成神が条件反射で佐久間を睨むが佐久間の方が怖い、すぐに肩を縮こまらせた。

「とりあえずありがとな」
「は、はい」






本人に聞いてみたらどうだと鬼道はいとも簡単に言うが、出来ないと俺は首を横に振る。佐久間がこの前みたいにからかってくるが鬼道は止めなかった。
本人に直接聞けたらどんなにいいだろう。そこまで出来るのであったら、こ、告白なんてのも出来るんじゃないか。とにかく今は早く名字を知りたい。名字が分からなくても名前にちゃんとかさんとか付ければいいと思ったこともあるが、ちゃんは俺が言うには何だか似合わない、さんはすごく離れた存在になってしまうようで嫌だった。
いや、幼なじみや同じ中学校出身でもない、(彼女は高校から帝国に入ってきた。これは佐久間の情報)元々何でもない関係で離れた存在ではあるのだが、これを機に少し近づけたら…とは思うのだ。

「ていうかお前が名前で呼べたら苦労しないんじゃないか?」

それが出来たらな。


 

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