不器用な豪炎寺






最近視線を感じる。授業中は後ろから、体育の時も後ろから、休み時間の時も、やっぱり後ろから。背後からしか感じない視線。初めは気にしないようにしてたけど、流石にこうも四六時中見られてると、見てる本人に理由をきいてみたくなる。ある日の休み時間、いつものように視線を感じたので、思いきって後ろを振り返った。

(…えっ)

ばちっ、視線が交わって、私は自分を見ている人物に驚いた。豪炎寺?
豪炎寺は慌てて視線を逸らすと、そそくさと教室を出て行ってしまった。友達が私にどうしたの?と言わんばかりの目を向けてくる。私はそんな友達に何も言えずにただ固まるだけだった。






その後もやっぱり見られるのは続く。私はもうその感覚に慣れてしまって、さほど気にはならなかった。そして不思議と嫌ではなかった。

「ねぇ、名前。最近あんた豪炎寺に見られてない?」

昼食の時間、友達が私に、まるで物騒だとでも言うように豪炎寺の話をふってきた。箸から卵焼きが滑って、ご飯の上へ落ちた。友達も感づいていたみたいだ。でもまぁ、あんなに私を見ているのだから私以外の人が気づいたっておかしなところはないだろう。

「そ、うだね」
「気持ち悪くないの?」

気持ち悪い。その単語が私の手を止めた。友達は言った方がいいよーなんて呑気に言うけれど、私はむかむかしていた。気持ち悪いって何だ。豪炎寺に対して失礼ではないか。私は見られていても別に平気だし、帰り道をつけられるなんてこともされていないし、何も危害は無い。第一、私が嫌に思っていないのだからそれでいいじゃないか。そう言い返そうと思ったが言い争いになりそうだったので、そこは口を噤んで黙って弁当を食べ続けた。

 

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