論者ガゼル






彼女を大事におもうことと己の性欲を抑えることは紙一重である。その二つは相反する。大事におもって手を出さない、そう考えが至った時、または彼女を組み敷いて自分の下であんあん喘がせたいと思った時、自制心といったブレーキがかかり彼女は笑顔でいる。私も笑顔でいる。すごく平和な光景が広がり、すごく平和な関係が更に深く築ける。そこで性欲というのは大抵すっかり抑え込まれ大人しくなるのだ。

だがやはり、性欲というだけあってそれは自然的なものであるから、またどこかで再び頭角を現してきて自分の中を支配しようとする。目の前に彼女がいて、それでいて室内にいた場合は非常に苦しい戦いになるのだが、そこでも大抵そいつは抑えられて、また二人の間に円満な関係が築ける。彼女は笑顔、私も笑顔、何も不幸なことなどない幸せな関係だ。

問題は、抑え込んだことによって起こる男の野生心。性欲と言ってしまえばまぁそうなるのだと思うが、あえて私はそう取らない。私の野生心は私によって再び強く上から圧され、心の奥底へ沈み込んでしまう。が、体は心のありようを忠実に表してくれるので、彼女と別れたあとは部屋に籠もりっきりになる。誰にも見せられない己の醜さをティッシュで全て覆い隠してしまうのだ。彼女との幸せが続くのならこんなことしても構わない。心構えだけはしっかりとしていたいのは、男だからではなく私だからだ。

いくら自分が自制出来ると高く掲げても、完全に制することの出来ない場面というのはいくらでも登場する。そんな雰囲気(ムード)になるのは彼氏彼女の間では頻繁にあることだ。例としては、彼女が不意にすごく可愛い笑顔を見せて私に愛の言葉を一言言いさえすればそんな状況、簡単に作ることが可能である。他には、泣いてる彼女を慰めている時に、彼女から瞳を涙で潤ませて感謝の言葉を述べられる時、躓いて自分に抱きつき上目づかいに謝罪の言葉を述べられた時だ。そんな環境に陥ってしまった時、どうするか。簡単である、自分を一度捨てるのだ。捨てるというのは一切の感情を外へ出し中を空にすることで、自制心そのものを失い性欲を認識出来なくすることだ。認識出来なければこっちのもので、あとは無心になって彼女と接していれば、段々と捨てた感情が己の中へと戻ってくる。そこで再び押さえつければ良いのだ。小難しい話になってしまったが男はみんなそうやって性欲を処理しているに違いない。少なくとも私はそうしているが、それが人と違えているとはあまり思っていない。そうしたことを考えてひたすら物思いに耽っていると、そんな私に気づいた彼女
から声をかけられる。そこで、何でもないから心配するな、と返事しようとすると胸の谷間が目に入るのである。今までの考えが大きく音を立てて崩れるのは些細なことからであり、彼女の擁護論は彼女によって儚く消え去っていくのである。






持論確信者
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