悪い子バーン






バーンが私のケーキを食べた。

一日限定十個、開店して十分でなくなってしまう、感謝デーの時だけ作られるその店のケーキは、そうそうお目にかかれるものじゃない。一日限定といっても日にちは不定期、一ヶ月に二回やる時もあれば二ヶ月全くやらない時もある。張り込んで張り込んでやっとゲットした超貴重なケーキ。だった。今はもう過去の話。

「あ?ケーキ?んなもんオレがとっくに食った」

なんて言われた瞬間私の頭は真っ白になって、二ヶ月張り込み頑張ったとか、買う時も大変に苦労したとか、そんな思いが頭の中をぐるぐるぐる。あれ特別うまかった、とバーンが言った頃には右手でぐーを作って彼を殴っていた。たまたまその場に居合わせたヒートとネッパーと、遠くにいたけど多分見てるなっていうガゼルのことなんて気にしてられない。

「ってーな!何すんだよ!!」
「バーンが私のケーキ食べちゃうからでしょ!!」
「それがどうしたんだよ!」

あ、顔が熱くなってきた。駄目だ駄目だここで泣いちゃ、私怒ってるはずなのに何故か涙が溢れてくる。拭くと何だか情けないから、涙を拭かずそのまま尻餅をついているバーンを睨みつけた。

「……っ、う、」
「え」
「あ」
「お、おい…?」
「っうるさいバカバーン!!あのケーキ、ずっと、頑張ってきたのに」
「…え?」
「バーン嫌い!!」

嫌い、吐き捨てて私は部屋まで猛然と走り出した。後ろも見ない横も見ない、前からグランやウルビダが通っても気にせず、部屋に着き私はひたすらに泣き続けベッドに突っ伏した。悔しいのか悲しいのか怒っているのか、はたまたどれも混ざっているのか、名前のつけがたい気持ちが体の中を渦巻く。

(…嫌い、って言っちゃった)

こうなったら意地でも謝らせる。


 

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