過保護な兄ヒロトとカオス ※学園 ※会話文多 ピンポーン。基山家のインターホンが鳴り名前は返事をして玄関へ駆けていく、がその後ろを地響きと間違えるくらいの足音で追うのは彼女の兄であるヒロト、別名過保護な迷惑極まりない変態だ。 「名前!お兄ちゃんが開けるからねもしかしたら可愛い可愛い名前を狙いにきた輩かもしれない」 「いや、でも私」 「いいからオレが開ける。何かあってからじゃ遅いから」 その気迫に押されて名前は足を止めた。ヒロトが玄関へ行きドアノブに手をかける。外から話し声が聞こえる。名前にはそれが誰か分かっていた。 「どちらさまで…」 「おい、迎えに来…」 ドアを開けヒロトが固まる。相手もヒロトが出てきたのが予想外だったらしく、迎えに来たと言いかけた唇が止まってしまった。その二人の横で髪を梳いている人物が、ヒロトの間をすり抜け名前の元へやって来た。 「何でヒロト(こいつ)がいるんだ」 「だからもう少し後に来てくださいってメールしたじゃないですか」 「…名前」 ヒロトの少し低い声が聞こえる。名前は肩を微かに震わせると兄の方向いて「はい」と小さく返事をした。 「なんでこの二人がいるんだ!お兄ちゃんに説明しなさい!」 「買い物に付き合ってもらおうと思って昨日誘ったの!」 「付き合っ…付き合う!?付き合うって、どっちと!!どっちでも許さないけど!」 「涼野、こいつめんどくさい」 「あぁ知ってる」 「買い物にって言ったでしょ!付き合うの意味が違うよ」 「南雲、涼野。お前たちにうちの可愛い名前は渡さないよ」 「なぁ名前」 「こいつぶちかましていいか?」 ヒロトが名前を腕の中に押し込めて二人を睨む。本来ならば春から通う大学の模擬授業を受けに既に家を出ている時間だが、靴を履きカバンを持ちそれじゃあ行ってきますな雰囲気のヒロトではなかった。 「お兄ちゃん大学行くんじゃなかったの?」 「そんなのどうでもいいよ。まずはこの二人を片付けるのが先だ」 「どんだけシスコンなんだよお前」 「全くだ」 「シスコンがなんだ!妹を大切にしちゃ悪いとでもいうのか」 「行き過ぎてるっつってんだよ」 「名前っ…買い物ならお兄ちゃんがついて行くのに!」 「おい基山」 「何ガゼル」 「風介だ」 涼野が冷たい目でヒロトを見下しながら薄ら笑いを浮かべる。ヒロトは少し怪訝そうな顔をして涼野を見た。名前は大人しくヒロトの腕の中。長年の経験で、抵抗すれば一時間は離してくれないことを知っていたからだ。 「何故名前が私と南雲に買い物の同行を頼んだか知ってるか」 「!せ、先輩!」 「…何でだ?」 「お前と一緒に行くと洋服がじっくり見られないそうだな。兄に服を押し付けられて」 「……」 「名前ってば大人しくて控えめなデザインの洋服を選ぶから、それじゃ名前の可愛さが十分に表現出来ないと思って」 「シスコンもここまで来ると病気だよな」 「どこがだよ、名前は別にそれで何も言わないんだからいいだろう」 「お前に言うかわりにオレたちに愚痴をこぼしてるからな」 「何っ…!?」 「なっ南雲先輩それは言わない秘密…!」 「あ?そうだったな。わりぃ」 「名前!本当なのか!?」 ヒロトの腕から解放されるが、今度は肩を掴まれ向き合う形になる。視線を逸らそうとするがヒロトの気迫に気圧されてしまい出来ない。 「う…」 「名前!」 言うか否か。認めるか否か。その時後ろから腕を掴まれ引っ張られた。よろけるが南雲が支えてくれたおかげで転ばなかった、ヒロトの顔が恐ろしいことになっていたが。そしてそのまま肩に担ぐように抱き上げられる。涼野は既に外にいて、右手に名前の靴を持っていた。 「このまま逃げるぞ!」 「南雲先輩!?」 「待て!!名前を勝手に連れて行くなんて許さないぞ!!」 「じゃあ借りるぜ!」 「お兄ちゃん絶対ついて来ないでね!」 「えぇ!?名前ー!!」 「行ってきま〜す!」 玄関を出てドアが閉まると、家の中でヒロトが名前の名を叫ぶ声が聞こえた。 「あいつのシスコンっぷりには誰もかなわねーな」 「名前も毎日毎日大変だな」 「はい…。たまにはこうやって別の人と買い物に行きたいです」 「オレたちはいつでも付き合うぜ」 南雲が名前を抱き上げて走りながら優しい言葉をかけた。名前は笑顔でお礼を言う。涼野が後ろを振り返り振り返りヒロトが追ってきていないことを確認すると、南雲は名前を下ろし涼野は靴を置いた。 「友人と行こうとすると駄目だと言って阻止したり、後ろをついて来たりするのでなかなか自分好みの服が買えなくて」 「それであいつと付き合いの長いオレたちに頼んできたのか」 「はい。付き合ってくれてありがとうございます」 「それでは行くか」 「そうすっか!昼おごるぜ」 「いいんですか?」 「私はどれでも好きな服一つ買ってやる」 「え、涼野先輩それは」 「私がいいと言ってるからいいだろう」 「出た。涼野のあまのじゃく」 「黙れ南雲」 「じゃ、行きましょう!」 シスターコンプレックス 姉さん!名前が晴矢と風介と一緒に買い物行っちゃったよ!! それは良かったわね、名前が愚痴をこぼしてくる回数も少なくなりそうだわ 姉さっ…名前!? |