変態な吹雪






危ない、と彼は私を突き飛ばした。地面に盛大に尻餅をついたあと、何が危なかったのかきいてみる、だが彼はガッツポーズをして「薄いピンク」とだけ言った。

「変態」
「毎日名前ちゃんのパンツを見る(ちなみに記録も怠らず)って今年立てた目標が早くも達成されなくなるところだったよ」

確か白恋中にいた時はにこにこ純粋な笑顔を浮かべてサッカーしてた、それがキャラバンに乗って私と行動を共にするようになると二日三日して私の隣を歩くようになって…一ヶ月もすると誰もいない時を狙っていつでもどこでも私を押し倒そうとするようになった、あれおかしいな私がこいつをおかしくさせてしまったのだろうか。いや、私は吹雪の母親じゃないから、有り得るはずがない、うん違うでも私が吹雪の心の奥底に眠っていた開けてはいけない扉を解放してしまったのは事実だろう。ごめん吹雪。

「…あ、キャプテンが呼んでる」

ナイスキャプテン、吹雪はキャプテンに返事をすると踵を返して走り去った。起き上がってお尻をはたくと、「薄いピンク」とまた声がした。

「っきゃあ誰!?」
「オレだ」

鬼道!!青いマントを風になびかせ腕組みをしている鬼道は、後ろから歩いてきて私の前に立つ。全然気配なかった、そんなわけで私の頭の中に鬼道忍者疑惑浮上。

「後ろからいきなり声出さないでよ。ていうか鬼道も変態」
「もって何だもって。たまたま見えてしまっただけだ。それにオレは吹雪みたいな変態じゃない」
「まさか変態という種には色々な属性があったなんて…」
「だから変態じゃない!」

鬼道の必死な返答に思わず吹き出してしまう。鬼道はこういうとこ少し天然っぽい。ゴーグルの下の目は焦燥の色に馳せた。

「何してるの?」

肩をびくつかせうっと小さく声を漏らすと、鬼道が振り返り声の主を見た。

「吹雪」
「何を二人で楽しそうに話してたのかな?」
「ふぶ」
「名前ちゃんは黙っててよ」

怖い!吹雪が怖い!というか戻ってくるの早くない?
鬼道は何も発さず吹雪を見つめる。吹雪は相変わらずにこにこしてるけど、さっき私に見せたにこにことは明らかに違うにこにこだ。私は吹雪に言われた通り、黙ることにした。黙ってないと目で射殺される。

「吹雪、調子はどうだ」
「全然問題無いよ。そういう鬼道くんこそ最近調子悪いんじゃない?名前ちゃんとしゃべってる暇があるなら体を治すことに専念しなよ」

鬼道が一瞬怯んだ。吹雪の反撃に驚いているのだと思う。吹雪は私に見せるこういうところ、あまり他の人に見せたりしない。けんかにならなきゃいいなぁ…。けんかになる前に鬼道なら何とか言いくるめて回避出来そうだけど。

「吹雪、お前」
「うんそうだよ」
「……」
「……」

沈黙が私たち三人を包み込む。さっきまでにこにこしてたのに、いつの間にか真顔(黒いぞ)になって鬼道を睨み付けるように見ている。というか吹雪今何て言おうとしたの?

「…そういえばオレも円堂に呼ばれていた。じゃあな」

このまま会話をしていたらやばいと思ったのか鬼道が逃げの姿勢をとった。どうやらけんかにならずに済みそうだ。二人に気づかれずにホッと息を吐く。のも束の間、吹雪はとんでもないことを言った。

「名前ちゃんの初めてをもらうのは僕だから」

いや、おかしいでしょ。






それと同時に誓ったこと


 

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