頑張るバーン
※同棲設定






彼女は何でもそつなくこなす。食事は作れるし掃除は出来る、丁寧に拭き掃除もする、洗濯物も洗って干して片付けられるし、…だ、だからオレの下着も洗ってくれるし、べ、別に興奮してねえよ!
とにかく、だ。彼女は家事はパーフェクト、オレの好きな料理もリサーチ済み。まあオレが教えたんだけど。誰にでも自慢出来るいい女だ。そんな幸せ絶頂期が平行線なオレを、ガゼルは鼻で笑って「のろけ馬鹿」呼ばわりするしグランには無視されるし、オレって結構孤独な身なのか?っと、話がそれた。とにかくオレが言いたいのは、彼女のことがとても好きだってこと。恥ずかしいから彼女には言えねーけど。
今日もガゼルのチームと練習試合をしてくたくたになって帰ると、ほかほかといい匂い。これは…豪華な飯の予感!

ビンゴ。テーブルはいつもより華やいでいて、雰囲気を大切にする彼女ならではのキャンドルが二本、テーブルの真ん中で揺らめいていた。

「バーンおかえり」
「お、おぉただいま…」

キッチンから出てきた彼女のエプロン姿にどきっと胸を波打たせると、オレは椅子に座った。彼女もエプロンを外し向かい側に座る。

「今日ね、」

彼女の話を聞きながらオレはチキンを口に頬張った。






彼女は何でもそつなくこなす。食事は作れるし掃除は出来る、丁寧に拭き掃除もする、洗濯物も洗って干して片付けられるし、…オ、オレの下着も洗ってくれるし、だから興奮してねえよ!
そんな同棲生活が当たり前になってきたある日の、まったりとソファでくつろいでいた時のことだ。インターホンが鳴って、オレはテレビから玄関の方に顔を移した。彼女が、見てくるね、とぱたぱた玄関へ駆けていったのを見やると、再びテレビに目を移す。昨日確かガゼルとグランがうちに来るとか言ってたのを思い出した。きっと冷やかしなんだろうが。

「困ります!」

彼女の困惑した声が聞こえて、オレはもう一度玄関の方を見やった。廊下へ続くドアが閉まっていて、リビングからは彼女の声しか聞こえない。何だろうか、どうやら新聞の勧誘みたいだ。新聞は基本読まねえし、彼女も「情報を知るのはテレビだけでいい」って言ってたから、前に断った筈なんだけど。呑気なことを考えていると、男の声が聞こえた。

「なあ〜嬢ちゃん取ってくれって」
「あの時お断りしました!」
「そんなこと言わずにさ、ちょっと上がらせてもらうぜ」
「お邪魔しま〜す」

男三人?新聞取るのに三人もいらねえだろ、しかも何でそんな奴らがうちに上がってくんだよ、おかしい。あれは新聞取りじゃない。

「やめてください、いや!」
「こんな広い家に一人で住んでるなんてな」
「随分金持ちだな。どっかの財閥のご令嬢か?」
「出てってください!」
「可愛い女目の前にして帰る馬鹿がどこにいるんだよ」
「!……っ」

ドタ、と何かが倒れた音がした。

「おい」

男三人は顔を上げオレを見た。

「人んち上がって何してんだよ」
「バ…晴矢!」

人間がいる為、彼女は南雲の名前でオレを呼ぶ。男三人は互いに顔を見合わせた。オレがいることに驚いたんだろうな。オレ自身、こんな昼間にいるのは珍しいし、男たちの方からしてもここには彼女しか住んでいないと思っていたんだろう。とすると過去に彼女はこの男どもに会ってる計算になる。オレの女に手出すとはいい度胸じゃねえか。それじゃ、オレはその度胸を讃えてあげねーとな。手に持っていたサッカーボールを床に落とし、玄関のドアが開いてることを視認すると、オレは右足を構えた。

「出て行きやがれ!!」

上げた右足を勢いよく前へ振り、サッカーボールを男ども目掛けて蹴ると、眼前に迫ってくるボールに三人はどうすることも出来ずに、ボールと一緒に外へ放り出された。

「二度とくんじゃねえ!」

慌てふためく男どもが視界から消えると、オレは彼女の元に歩み寄った。

「大丈夫か」
「あ、ありがと」
「何であいつらが前から来てること言わなかったんだよ」

彼女は眉を下げて少し俯く。…怒ってないのに、怒られたと勘違いしてるのか?おい、別に怒ってないからな、オレはお前を心配してるんだ!そう言いたくなるが、その場の雰囲気がオレの言葉を喉の奥へ押しやる。でも何か言ってやらねえと。考えれば考えるほど頭がぐるぐるしてくる。

「お、怒ってねえぞ?ただオレは、」

頑張れオレ!

「お前が心配だから、その…えっと!あー訳分かんなくなってきた!つまり!!」

ガゼルとグランがドアを開けると同時にオレの言った言葉が、ガゼルたちのからかいの格好の標的になったことは言うまでもない。






護りたかったんだよ
彼女の笑顔が見られたのでオレは満足だ




 

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