強引な風丸






明日体育でこの寒空の中半袖を着なければいけないのに、変な誤解をされてしまう。保健の先生にばれたら面倒くさい、絶対休み時間に保健室に来いなんて言われてしまう。(もしかしたら授業中に、なんてのもありえる)
とにかくこの状況を打破したいのは確かだ。

「すいません風丸さん、この手を離していただけるとありがたいのですが…」
「は?」

すごいにっこり笑顔で言われた。怖いよこの人!確かサッカー部の、疾風の何とかって呼ばれてる人だよね?私に何の用だろう。「なあ」私の両手首を掴んだまま、風丸さんは低い声で話しかけてきた。誰か助けて!いきなり廊下で声かけられて壁際に追い詰められたのですよ!しかも腕を掴む力が強くて微妙に痛いです!(あざになる!)

「お前、マネージャーになる気はないか?」
「はい?」

マネージャー?サッカー部の?風丸さんはいつの間にか真顔になっている。どうやら真剣な話らしい。彼と顔が近いせいか、私の頬が若干熱くなる。私、風丸さんにドキドキしてるのかもしれない。いやいや、ないだろう。こんな状況で何を。目を外そうとするが、風丸さんは視線を外してくれない。濃いブラウンの瞳に吸いこまれるような錯覚にはまり、外したくても外せないでいた。サッカー部のマネージャーか…。

「…ん?ちょっと待って」
「何だよ」
「マネージャー、三人もいなかったっけ?」

風丸が何故かものすごく不機嫌そうな表情をした。え、今何か悪いこと言ったかな?サッカー部のマネージャーには、確か理事長の娘の雷門さんと秋ちゃんと、あと一年生の子が一人。合計三人。部員の人数からして十分だ。少し手があまるくらいだ。なのに風丸さんは私にマネージャーの話を持ちかけてきた。しかも真面目に。神妙な顔つきで。……あ。もしかして…。

「今のマネージャーに不満でもあるの?」
「無い」

きっぱりと断言された。じゃあ何で私を誘った。そう伝えると、風丸さんはさっきと同じ、にたっとした笑いを浮かべた。わあ、嫌な予感しか感じないよ。

「お前はオレだけをサポートしてくれればいいんだよ。他の男になんか渡さないからな」

そもそも私たち恋人じゃないんですが。






待っているのが出来ない性分でね
そろそろアタックしていこうと思ったんだ


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