強引ネッパー






「お前昨日サトスと買い物行っただろ」

冷えた声で突きつけられるかのごとく言及され、私の足は竦む。練習が終わって廊下を歩いていたら、不意に角から腕を引かれ、人気の無い廊下に連れ込まれた。私の腕を引いたのは、今日調子の悪かったネッパー。ちなみに私の彼氏である。

シュートが入らない、パス回しが上手くいかないなどと調子が悪く、そして機嫌もすこぶる悪かった。キャプテンのバーン様に理由をきいても、分からないと返され、他のチームメイトも首を傾げるばかりで、あとで夕食の時にネッパーにきこうと思っていたのだ。

ネッパーの問いに、回らない舌を動かし、頬に流れた汗を手の平で拭う。ネッパーのぴりぴりした雰囲気に冷や汗が止まらない。

「い、行ったよ」
「何でサトスと行った」
「それは…サトスが行くって言ったから」
「…オレに声をかけずに?」
「だ、だ、だって、サトスが、さっきネッパーはバーンの部屋に向かったって言ったから」

ネッパーのバンダナの下の目が、ぎらぎらと、まるで獲物を見つけたライオンのように鋭い光を帯びている。私は、言うなれば子兎だ。しかし子兎ではライオンの空いた腹を満たさないだろう。せいぜいおつまみ程度だ。

ネッパーは深い溜め息をついた。その溜め息の感じが、普段のネッパーと変わりない調子だ。機嫌が直ったみたいだ。良かった…心で安堵の息をつく。

「…ったく」
「ごめんねネッパー、今度はちゃんと…」

微笑を顔に浮かばせ、ネッパーを見ようと顔を上げた、――瞬間、声が消えた。私の声が鼓膜を震わせることなく何かにのみこまれる。状況が分からない、しかし、目の前にはネッパーの大きな顔。さっきまでのネッパーが遠くに感じるくらい、今は近い。くぐもった声しか出ない私を、更に追い立てるつもりなのか、ネッパーは唇を離さず、むしろ私の舌を自分のと絡めて、片足を私に押し付けてくる。「ふ、ん…っ」唾液の混ざる音、私のだらしない声、ネッパーが私を見ている気がするが、私は目を開けられなかった。

「っ、はあ、はあっ…」

ようやく解放され大きく息を吸い込むと、微かに私の汗の匂いがした。ネッパーがやっぱり私を見ている。耐えきれない云々よりも、まずは体に空気を取り込む方が先だった。肩で呼吸を繰り返す。廊下に響くのは私の息づかいだけで、あとは何も聞こえなかった。気配も無く安心する。今度は安心していいと思う。






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しかし上体を起こされ、私は荒い息のままネッパーと向き合う形になった。口を真一文字に結んだネッパーの顔は相変わらず無表情だが、またキスされるかも、と私の頭の中はそればかりがぐるぐると回り回っている。が、私の予想は外れ、ネッパーが三日月のように口に弧を描いた。

「妬かせんじゃねえよ、バーカ」

ぺろり、と口元の垂れた唾液を舐められ、私の心臓はぴたりと止まった。

 

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