ふんわりヒート






イケメンとはまさしくこの人を指すのだ、と思った。幼少時代は病弱だったとバーン様は言ったが、毎夜毎夜私と体を重ねる彼にそんな面影は見いだせない。彼はずるかった、私をこんなにも夢中にさせといて自分は飄々としているのだから。

「ぜろ、いち、に、」

彼の声で意識がこちらに戻ってきた。重い瞼を感じながらも数ミリ目を開け横を向くと、天井を仰ぐように右手を高くして、まるで小学生、指を使って数を数えていた。水の欲しい喉を震わせ彼と会話をはかる。

「何…してるの」
「うん、あのね、数えてた」

私を馬鹿にした答えだ。だけど腰の鈍痛の所為で怒りの感情が沸かない。彼はずるいのだ。

「…何を数えてるの」
「んー…君とあと何年後に一緒になれるかってね」
「……バカ」
「さん、よん。あと四年だ。四年後に君はオレと同じ十八歳だね。若いなぁ」

あと四年。長いと思えばすぐにやってくるだろう。私たちは少しずつ大人に近づいていって、いつかは幸せになれると信じてる。この学園は私も彼も狭く思う。中学生ながらに感じていた。この学園の怖いところは、私たちをこうやって堕落の道へと歩ませるところだ。

「…名前」
「何」
「結婚の条件は」
「経済力」
「厳しいなぁ」
「ヒートは」
「美人」
「死ね」
「名前は綺麗だよ」

彼の笑い声が癪に触る。が、心は温かい。こういう真面目な話をふっといて自分はふざける、それが彼だ。最後の言葉は本気であって欲しいけど。

「幸せになろうね」
「まだ早いよ」
「四年後も同じことを言ってみせるよ」
「はいはい」

私の手首を静かに掴む彼を柔らかく制す。ほら。聞こえてくるよ、我がチームのキャプテンの足音が。






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