甘えたい不動
※無理やり設定






「っち、くそっ…」

今日の練習は休み。監督に合宿所から出るなと言われたが、空気が悪くて我慢出来ずに抜け出してきた。道路に転がるコーラの缶を思いっきり蹴る。缶は乾いた音を立てて、車道に飛び出した。缶の上を車が通る。缶を無視して走り去る車。腹が立ってどうしようもない。また舌打ちをして、オレは抜け出してきた目的である、あいつの住んでるマンションに向かった。






「ちょっ、と!何!?」
「邪魔するぜ」

いきなり入って来ないでよ!と文句を言う名前を無視し、リビングに行ってソファにどかっと腰を下ろした。飲みもん、と乱暴に言うと、ぶつぶつ言いながら麦茶を出してくれる。少しの苦味がオレ好みで気分がいい。

「はー生き返る」
「大袈裟な」
「合宿所は息苦しーんだよ、暑苦しい奴らがいて」
「……まさか一時の休憩所の為に私を東京に来させたの!?」
「それだけじゃねえけど」

名前は、オレが収集かけられて東京に来る際連れてきた、真帝国のマネージャーだ。恋人同士ということもあってか、奴はオレの同伴をすんなり了承してついてきた。マンションの家賃代や光熱費は心配いらない、何故ならオレのいたエイリア学園のあの方(つまりお父様)が刑務所内から金を出してくれてるからだ。ほとんど面識はないが、これであの方の子供好きが良く分かる。金を出してくれてるのには感謝している。

「どう?合宿は楽しい?」
「全然楽しくねー」
「ふふっ、だろうね。不動は意地っ張りだから」
「んだと!もういっぺん言ってみろコラ!」
「きゃっ」

笑う名前の肩を掴んでその手に力をかければ、奴はいとも簡単に後ろへ倒れた。跨って口に弧を描いて名前を見下ろす。オレを睨む彼女がすごく色っぽくて思わず喉を鳴らす。彼女も、これから何をされるか分かっているのだろう。抵抗しない手が震えている。
しかしオレにそんな気はなかった。

「じっとしてろよ」

オレの顔が近づいて来た時、キスされると思ったのか、名前は固く目を閉じ唇をむすんだ。そんな彼女を口の端で笑うと、肩に置いていた手を彼女の背中に回す。

優しく抱きしめた。

「…っふど、う?」
「黙ってろ」

名前の体から力が抜け、オレは柔らかい彼女に包まれた。オレの頭に腕が回る。あ、いい匂いだ。オレの行動を不思議に感じてる名前は、まだ少しびくついてるみたいだ。

「ど、どうしたの?てっきり私…」
「えろいことすると思ったのか?」
「だって、いつも不動優しいことしないから」
「…てめえ……」

ぐっと睨めば、奴はにこにこ、いやにやにやしてオレを見、声を立てて笑い出した。こうなってしまったら笑い終わるまで待つしかない。滅多なことでしか笑わないオレに反して、異常なまでに笑い上戸だ。名前はひとしきり笑って、オレに一つ尋ねた。

「で、どうしたの?」

こういうところ、オレに似て意地悪だなと思う。だけどむかついたり嫌になったりしない。きっとそれはこいつだからじゃない、オレに似てるからだ。そう無理やり思い込むことにした。






blessed
たまには甘えたいんだよ


 

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