吉良ヒロトくんについての魅力を語ることにしよう。「どうしたの、急に」眼鏡を掛けてパソコンとにらめっこしていた彼は裏表ない笑顔で顔を上げた。陽のよく差し込むテラスに吉良ヒロトくんだなんて、なんて素敵。絵になる。私に美術系の友人がいたら迷いなく彼の肖像画を描いてもらえるよう依頼しているだろう。そしてそれを家に飾るんだ。傍らに花も何もいらない、彼だったらたった一人で私の生活に華をもたらしてくれるからだ。今上手いこと言った。 「そんなわけで私は吉良くんは素敵だなと思います」 「じゃあ、逆に僕の不良点はどこかな?」 即座に答えた。隣を並ぶのがたまにいやになる。吉良くんは苦笑の笑みを浮かべた。詳しく言おう。吉良くんの髪の色がネックとなるのなら、私はとうに吉良くんの友人ではないだろう。髪がネックなのではない。吉良くんの魅力はその横顔にあった。元々均整のとれた顔をしている吉良くんは、横顔が大変に美しい。暗めの赤髪と相まって、眉間にしわを寄せた時の彼の目元は限り無く夢がある。変な表現だが、これが吉良くんを表象するに精一杯なのだ。吉良くんが好きで、好きの気持ちを超えた何かがあって、それで私はこんな奇行に及んでいる。 吉良くんはパソコンを静かに閉じた。親指と人差し指でフレームをつまみ、メガネを第二ボタンまで開けたシャツに掛ける。ああ、様になる。女の私でも到底辿り着けない世界に彼は生きている。 「じゃあ僕は名前の魅力について話すとするかな」 何だって?誰の魅力を話すって? 「…きっ吉良くん、無理しなくていいから」 「無理?」 「私が勝手に言いたくて言っただけだから、吉良くんは律儀に返す必要は、」 ないんだよ、って言いかけて口を閉じてしまった。吉良くんは本当に嬉しそうに微笑んでいた。「き、吉良くん?」何かおかしかっただろうか。吉良くんの人差し指が自身の顎をなぞる。薄く透き通るような肌は、日光を浴びても色を失わない。「――いいや、何でもない」落ち着いた声音で彼は続ける。「ただ、名前が好きだなって」 「……や、何言ってんの?」 「ごめん、いきなり。でも本当にそう思ったんだ、今」 心拍数はどんどん上昇していく。吉良くんの周りが明るくなったように思えた。彼は本当にすごい人。彼の好きの言葉だけで、私はこんなにもお腹いっぱいになる。 「好きだよ、名前」 吉良ヒロト―…私は、彼のかけた魔法から逃れるすべを知らない。 五の口が言う |