葛藤するアフロディ






例えば好きな子が無防備だったら、どうか。眠っていたら、どうか。その時の顔が可愛かったら、どうか。

「……スー…」

そんな場面に出くわしてしまったら、どうか。ソファの上で気持ち良さそうに眠る彼女がスカートを履いていたら、どうか。丈の短いスカートだったら、どうか。

きっと世の男たちはどうしようもないのだろう。理性と必死に戦ったとしても、結局のところは根負けして彼女を下に天井に背中を向けてしまうに違いない。だが、僕はそうじゃない。こんな状況に出会ったのは初めてだけど、そこらの男と違って理性で抑えることが出来る。元々彼女は可愛いのだし、丈の短いスカート履くのも毎日見ている。そう、つまり免疫が出来ているのだ。

彼女はクッションを枕にして、横向きになって寝息を立てている。僕は手に持っていたビニール袋を、テーブルにそっと置き中のものを取り出した。アイスが二つだけ。どっちが買いに行くかじゃんけんをして負けたので、僕は向かいの道路沿いにあるコンビニへ足を運んだのだった。中はほかほかあったかく、丁度いい温度だ、と長居をしてしまって、慌てて帰ってきたらこのようになっていた。

「…ん」

不意に寝言が漏れて僕は我に返った。見れば彼女が片足をソファから落としている。まあ彼女の寝相が悪いのも知っているのだが。鈍い音を立てて片足が絨毯についても、彼女は起きる気配が無い。僕は彼女に歩み寄り、足首を持って片足をソファに戻そうとした。

「んっ…」

その時不意に聞こえた声。足を持ったまま彼女を見れば、やっぱり寝息を立て眠っている。なんだ、聞き違いか。何をやましいことを考えてるんだ僕は。さっき理性で抑えられるって言ったばかりじゃないか。足を持ち上げた。

「っあ…っ」

が、その声は再び僕の鼓膜を震わせた。彼女が身を軽くよじってクッションに頭を埋める。起きる気配が無い。しかし僕の体は彼女の声を聞いて冷静さを失ったようだった。…駄目だ、彼女の足に見とれちゃ駄目だ。……だからといって胸に目がいくのも駄目だ僕!これじゃ他の男と何ら変わりないじゃないか。あ、いい匂い…彼女の髪からだ。へえこんな香りのシャンプー使ってんだーってほら!!駄目だって!!あ、また動いて胸が揺れ…駄目なんだって!!冷静を取り戻そう僕。とにかく心を落ち着かせよう、うんそれがいい。落ち着け、落ち着け、息を吸って深呼――

「…す、き……アフ…ロディ」

そんな葛藤を繰り返した僕も、我慢の限界のようだ。






男と狼の狭間
悪いのは彼女の方だ




 

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