甘くないアフロディ






僕は今テレビを見ている。
別に僕が観たくて観ているわけじゃない。彼女が観たくて観ているわけで、それに付き合わされているだけだ。
四角い箱から放たれているのは大して面白くもないバラエティー番組。神である自分からしてみれば、こんなの見なくたって生きていけるのに、全く彼女ときたら、僕そっちのけで、そこに実在しているわけじゃない虚ろな映像を観てクスクス笑っている。いよいよつまらなくなって、僕は彼女の好きなところ嫌いなところを数えてみることにした。まず可愛いが一つ、その次に僕のことを好きに二つ、そして優しいところに三つ。どの彼氏彼女にも通じるところは、彼女は難なくクリアしている。他には拗ねた顔が可愛すぎるところ。それは他の男の前ではして欲しくないな。あぁいけない、個人の意見が入ってしまった、じゃあ次は嫌いなところ。ええと、嫌いなところ

「あはは、面白い。『違うから!』ってつっこみ」

嫌いなところ?うーんと、そうだな…。ええと、…あ、メールの返信が遅い…?いやいやいや、そこは嫌いなところには入らないだろう、そんなの人それぞれだし、忙しくて後でメール見ることもあるじゃないか。それは“状況”が入ってくるから仕方のないこととして、そうじゃない彼女の嫌いなところ。

「今の人面白かったなぁ。あの人にグランプリ取って欲しいな」

嫌いなところ…が、ない?

「…ねえ、さっきから何をそんなに考えてるの?気難しい顔してるし…それとも、具合悪いの?」
「いや、そうじゃなくて」
「じゃあ何?」

別に言ったところで怒られるわけでもないし、いいかな。そう思って僕はさっき考えていたことを説明した。君の好きなところと嫌いなところを数えてたんだよ。

「へぇ。結果は?」
「好きなところは数え切れない程あるんだけど、嫌いなところがなかなか見つからなくてね。それで」
「あっCM終わった!」

僕の言葉を切って彼女が口から発した音は、シーエムオワッタ。そこで僕らの会話も終わった。会話は途切れ、彼女はまたテレビに集中する。そして再びクスクス笑いながら、リモコンを手に取って音量を少し上げた。

今分かったよ。彼女の嫌いなところは、僕の話を聞かないでテレビを見るところだ。








リモコン
いっそ奪っちゃおうか




 

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