彼がわたしに嘘をついたのはこれが初めてだった。彼はわたしに嘘をついた、生半可な嘘ではなく、甘い嘘ではなく、ほろ苦い嘘でもない。ただ自然に、さらりという擬音語がつく嘘。 悲しかったわけじゃない、悔しくも恨めしくもない、かといって嬉しくも楽しい気持ちになることもなかった。ただの優しい嘘。わかりきった嘘でも、それはわたしを夢中にさせるのに充分すぎる嘘だった。それは微笑ましい嘘であり、将来の幸せを示唆出来る嘘。嘘という名前の告白、彼の嘘とはいつもそういう嘘なのだ。 好きかもしれない それって嘘じゃないよね! |