今日は1日練習である。昼前に清水が用事で帰ってしまったが、清水がいたときと同じ様に(ずっと黙って黙々と、ではあったが)、名字はきちんと働いているようだ。ついにゴミ袋5個分になった倉庫のゴミを、少しずつゴミ捨て場所まで運びに行ったところだ。名字がこの体育館を出入りする事にも慣れてきた。

名字は、俺たちには声をかけない。清水には、主に分別についてではあるものの声をかけていたし、ついでに髪型だったり宿題のことだったり、そんなに反応がなくても話しかけ続けていたからか、問題児イメージからか、ただ黙ってきびきび動く名字の印象が大きく変わった。日向に見せた媚びた笑顔も、どうやら社交辞令だったようだ。俺達には、自分から関わろうなんて思ってないようだった。


昼飯休憩。

「なまえー」
「あ、今日は部活?」
「そうそう、なになまえ本気で倉庫掃除してんの?」
「そうだよー」
「うわー」
「罰則だしね」
「はぁ?これ罰則なの?」
「そうそう。日村先生の写真撮ったのが駄目だったみたい」
「あー、日村って噂あるよな。お前の友達と」
「うそ、やーね、やらしい」
「はいはいお前の友達はみんなそうだよ」
「酷いー」

渡り廊下で名字とどっかで聞いた事のある男の声が聞こえて、体育館から顔を出して覗いてみる。


「あ、菅原じゃん。こいつアホの子だけどさ、面倒みてやってなー」
「おー、なに?名字さんアホの子だったの」
「見た目通り」
「酷くない?」
「ならもうちょい高校生らしい格好しろよな」
「可愛いでしょ」
「どう思うよ、菅原」
「まぁ、うん」
「えー、なにそれ何がダメなのか分かんない」


そういう所だよな…、そう呟くサッカー部のクラスメイトに何となく共感。名字は浮いてる事に自覚はないのか、少し驚いた。


「グラウンド行かなくていいの?」
「あ、そうだった」


じゃあまたな!菅原!名字!、そう爽やかに走り去るクラスメイトに多少なりの尊敬をしつつ、笑顔で送り出す。目立つグループには目立つグループを。チャラチャラしてはいるものの、爽やかで分け隔てのないクラスメイトに少し尊敬する。
俺は何もないのに名字のような問題グループには声をかけれない。


「ごめんねスガくん」
「え、何が?」
「問題児が罰則でお邪魔とか、申し訳ないよさすがに」
「えーあー、別に、迷惑でもなんでもないって」
「えー援交グループ問題児ってこの時期関わりたくないもの一位だと思うけどなぁ」
「いやいや、それ言っていいのは俺らの方だべ名字が言ってどうすんの」
「いいづらそうな事は自分から……?」
「ふーん」


あれ、こいつ、意外と自覚あるんだ。ただヘラヘラしてるだけかと思ってたけど。なんて、ちょっと失礼な事を考えたり。

「持ち物が高校生じゃない」
「さすがに気づかなかったわ」
「髪の毛とか、手入れしすぎ」
「良いことじゃん」
「なんか妙に垢抜けてるし」
「案外垢抜けてない子の方がやることやってると思うんだけどな」
「そういうとこは、バカっぽいと思うよ」
「結構毒舌ー」

穏やかな昼下がり、名字の笑い声が響いた。






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