次の日。まさかではあるが、“GW中倉庫掃除しにくる”という宣言通り、名字は体育館に顔を出した。しかもジャージで。髪もきっちり1つにまとめて、ゴム手袋までしている。たまに倉庫から清水を呼んで、くたびれたバレーボールや、謎の紐を捨てても良いか確認するだけだ。
この体育館はほぼ男子バレーボール部のものと化していて、倉庫の中も基本的にはうちの部の物が殆どだ。モップやポール、ボールやネット、雑巾や旗等、部員やマネージャー以外に判断は難しい。


「なまえ、」
「なぁに?潔子ちゃん」
「これ、日向に渡しといてくれない?
悪いんだけど、私、今日は早めに帰るから」
「そうなんだ。分かった」
「うん、ごめん。お願い」
「分別、どうしようか?」
「武田先生が分かるから、聞いて」
「りょーかい」
「じゃあ、よろしくね」
「うん、ばいばーい!ありがとう!」
「ばいばい」


名字はちょっと残念そうな顔をしたものの、すぐに笑顔になって清水に別れ際の挨拶をする。気をつけてねと、黒いジャージが見えなくなるまで見送る様子は、それなりな仲の良さを感じられた。清水も目立つ存在ではあるが、名字とはまた違った目立ち方だ。何が違うのかはあえて黙っておく。

田中や西谷が、清水にけしかけるような挨拶をしているのを、不思議そうに見つめる名字。あのテンションは分からないよな〜普通じゃないもんな〜やっぱ。そう思って背中を見つめていたら、くるりと名字はこっちに体を回した。清水より明るい栗色の髪が、まとめられた部分から綺麗に風になびいた。目が合う。するりと視線を外されて、名字が月島の方を見た。そこからゆっくり体育館をぐるりと見渡した後、大きな声ではっきり喋った。



「日向ってどの人?」


一瞬でシーンとした体育館に、あっ俺、俺ですって日向の声がする。名字は良かったぁ、私みんなの名前分かんないんだよねぇーとにこにこ笑いながら、日向に向かってナイロン袋を渡す。潔子ちゃんからだよ。日向くんよろしく、清水とは違う、ちょっと媚びた笑顔がそういった。






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テーマ「人外ファンタジー」
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