※遠距離恋愛の続き
成神はイタリアにいます




成神と別れた
当たり前だけどメールも電話もしていない
まだ一ヶ月しか経っていないのに、会いたいという気持ちは押さえきれなかった

一ヶ月はあまりにも長すぎた






大学の授業は退屈だ
今までなら成神とメールなんかで時間を潰していたが別れてしまった今は授業中に携帯をいじる事はほとんどなくなった

何となく携帯を開くと“新着メール一件”の文字
もしかしたらと思って開いてみるとそこには待っていた人の名前ではなく佐久間だった

―授業終わったら時間空いてる?

それだけ書かれていて、『空いてる』と送っておいた
じゃあ、中学の時よく行ったファミレスで待ってると帰ってきて分かったと送り返し再び授業を聞いた

中学を卒業して一人別の高校に行った佐久間と会うのは中学の卒業式以来だった


授業が終わって足早にファミレスに向かう



目の前の自動ドア開いた
入って回りを見れば何も変わっていない店内
辺見こっちと佐久間の呼ぶ声がして声のする方を見れば懐かしい顔

窓際の席に座っていた佐久間は中学の時よりずっと大人な顔をしていた
昔みたいに眼帯はしていないし長かった髪もばっさりと切っていた

中学の時から好きだったカルボナーラを頼めば佐久間に女子かと突っ込まれた

しばらく食事をして他愛もない話をしていたら突然
「成神とは最近どうなんだ?」
そう言われた
少し躊躇ったが別れたと言えば佐久間は食べる手を止めて俺を見た
「なんで?嫌いになった?」
「そんなわけねぇよ。好きだよ大好きだ」
「じゃあ…」
「離れているのが辛い」
「ごめん」
「何でお前が謝んだよ」
その時俺は笑って済ませたけど佐久間はずっと悲しそうな顔をしていた


帰り際に佐久間に
「もとに戻ることは出来ないのか?」
と聞かれた
「無理じゃね?俺から言ったし」
「そっか…でも成神は待ってるんじゃねぇの?」


佐久間と別れてアパートに戻った
佐久間が言ったことが頭の中でずっと繰り返されていて
携帯をとった


3回コールで出なかったらやめよう
そう決めてアドレス帳から成神の名前を探す

プルルルル
と無機質な音が耳に響く
一回目…二回目…

―もしもし…

あ、出た…
一ヶ月ぶりに聞いた声はひどく懐かしく感じてそれだけで泣きそうになった
「先輩?」
「……あ…」
掛けたはいいが話す内容が見つからない
「えっと……」
「まだ…」
しどろもどろしていると成神が話しかけてきた
「え?」
「まだ好きですか?俺のこと」
「………うん」
小さく答えた
「自分から別れといてだけど、俺はもとに戻りたいよ。この一ヶ月、会いたくて仕方なかった。でもここで付き合っても同じになると「待っててください」
突然、黙って聞いていた成神が口を開いた
「俺が日本に帰るまで、待っててください。とは言いません」
泣きそうになった
いや、もう泣いていた
「ただ、俺が日本に帰ったとき、先輩がまだ俺の事を好きだったらその時は結婚してください。その間に、先輩が誰と付き合ってようが、俺の事を嫌いになってても構いません。その時は諦めます。でも、それまで好きでいてくれたら俺は絶対にあなたを離さない」
「…う…ん」

これってプロポーズなんだなんて思ったのは電話を切ったあとだった

いつ成神が帰ってくるか何て知らないし、それまで我慢できる自信もない
「そうだイタリアへ行こう」
そう決めた5日後、俺は日本を出た




待ってなんていられない
あなたがまだ好きなら会いに行くよ




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