世界が終わる音がした。 | ナノ
夢を見た。
宇宙だ、僕は宇宙に漂っていて、ふわふわと遊んでいたら、急に目の前を大きな隕石がもうスピードで通り過ぎたんだ。それで危なかったなーって隕石の行方を探したら、その隕石はまっすぐ地球に向かってるんだよ。衝突しちゃう、と思って目を閉じた所で目が覚めた。いつもならこんなの変な夢だったなーって起きるんだけど、今日は違ったんだ。胸がドキドキして首回りとか背中の汗が尋常じゃないくらいで、もやもやしたものが胃からはい上がってきそうだった。でももやもやしてたのは最初だけで朝ご飯を食べる頃には何でもなかったように何も感じなくなっていた。だけど、夢の出来事は頭の中にこびり付いていて別のことを考えようとしてもふとした瞬間に思考回路に割り込んでくる。ああもう何なんだ。頭をふるふると振っても髪に付いたゴミのようには離れてはくれなかった。途中でもういいや、どうせ気付いたら忘れてるさと高をくくってサッカーボールを抱えて家を出た。外は眩しい位に晴れていた。


「ゴメン待たせちゃった」

ぜぇぜぇと肩で息をしてまでも急いで来たのは白恋中のグラウンド。センターサークルには幼なじみの名前ちゃんがリフティングをしていた。していた、と言っても二回ほど膝に当てては四方八方に飛ばしているようなお世辞には巧いとも言えないような可愛いものだけれど。

「大、丈夫っ。退屈は、してない、から、あぁっ!」

三度四度膝で跳ねたあとボールは僕の方へ飛んできた。持っていたサッカーボールを足元に置いて、飛んできたボールを取ろうとした。が、夢の出来事が急にフラッシュバックして体が動かない、サッカーボールがやけに大きく見えた。気が付けば僕は尻餅をついていた。後ろではてん、てん、とボールが跳ねる音がする。

「…士郎?」
「あ、ご、ごめん」

一言名前ちゃんに謝って、転がったボールを拾った。
何だったんだろうか。今のは。振り向けば名前ちゃんがにっと笑って立っていた。あ、この笑顔キャプテンに似てる。

「今日はサッカーいいや!」
「へ?」

「いいって、練習しないの?」
「んー、今日はね!」
「…そう?」
「よし、じゃあ街行こう」

ええ?
突然の名前ちゃんの発案に驚いて目を丸くさせていると名前ちゃんは僕の手をとって走りだした。

その日は日が暮れるまでずっと街で色んなとこを回って遊んだ。マックでお昼を食べたり、久しぶりにサッカーから離れて遊んだ気がする。ふいに、朝の夢を思い出した。何だろう、悪寒が走る。

「ね、もし、もしね、今日が地球最後の日だとしたら名前ちゃんは、どうする?」
「何それ、何か映画でもみたの?」
「あ、うん、まあ」

んー、と顎に手を当てて考える名前ちゃんを歩きながら横目で見る。僕は、何を焦っているんだろう。ああ、いやな汗が出てきた。

「んー?どうなんだろ。実際なってみないと分かんないよね、そうゆうのって」

なっても分かんないかも、名前はけらけら笑った。うん。僕も分からないよ。

そのあと、家に着いてじゃあね、と言うと、名前ちゃんは、また明日ね、と言って手を振った。胸がきゅうっと縛られたように苦しくなった。

夜、寝る前に空を眺めると満天の星空の中で一際大きく流れる星を見つけた。