じょじょ四部 | ナノ
「和真さんは女に嫌われる為にはどうすりゃいいと思います?」

仗助の突然の質問には俺は頭の上にクエスチョンマークを飛ばし、はぁ?と声をあげるしかなかった。あいにくと女性に好かれようとはすれど嫌われようとしたことはない。というか嫌われようとする人間が……いるのかもしれないが、残念なことに俺は一度も出会ったことはない。好かれようと努力してもないのにモテるような人間は目の前にいるがな。え?何?モテすぎて困るから嫌われようってこと?意味わかんねー、その容姿八割分けろ。

「あ〜?話が見えねぇーよ」
「んー、康一のヤツがちょっと、厄介な女子に好かれちまってよォ〜」
「女子は総じて厄介なもんだろ?」
「その厄介のレベルが度を越してるんスよぉ!!」

首を傾げてやると、あーもー!と癇癪を起こした様に仗助は頭を抱えた。康一くんに厄介な女子、ってーと山岸由花子か。頭を抱える女子を余所に、漫画の内容を必死に思いだそうと頭を捻るが、いまいち山岸由花子のことを思い出せない。もうヤンデレってことしか…。

「じゃあ、和真さんの嫌いなタイプとか、って」
「それ参考になるのかぁ〜?」

顔を歪めて言うと仗助はうっと痛いところを突かれたと唸って、そうっスよね〜と力なく項垂れた。ヤンデレってちょっとやそっとじゃ好きな人のこと嫌わないと思うけどなぁ。康一くんの為にも、と漫画の大筋を頭のなかで思い返そうと頑張ってみたがいまいち思い出せない。割となんとかなったんじゃないかな。他人事で悪いけどさ。無責任にも「大丈夫さ」と項垂れ続ける頭に声をかけようとすると、仗助は勢いよくガバッと頭を上げ声を出した。

「やるだけのことはやったんスよ!きっと大丈夫っスよね!」

いまいち明るいとは言えない表情だったが、ここは肯定をする場面なんだろう。原作を覚えている身としては何も大丈夫でないことはわかっているが、たしかここで康一くんのエコーズが進化をしたはずだ、変にてを加えて原作を改変してしまってエコーズが進化してしまっては今後にかかわってくる。

「そうだな」
「じゃ、今日はもう帰るっス、和真さんあんがと!」
「おぉ、気ィつけて帰れよー」

うぃーす、と気の抜けた返事を返す仗助に手を振って、パタンと静かに閉まった扉に鍵をかけると、俺は布団へ潜り込んだ。康一くんのことも気にはなるが、明日の授業は午前から、早めに睡眠をとっておこう。
講義も終わり、バイトも夕方からラストまで。体力温存のため、布団に寝転んだ俺に無情にも電話のコールが鳴った。

「もしもし?」
『あ!和真さんやっと出たっスね!!ちょっと急いでるんで突然なんスけど、海が近くてまわり50mに人がいねーようなとこってわかりますか!?』

なんだ、仗助かよ、そういう間を与えられることもなく矢継ぎ早に言われて寝起きのぼんやりした頭をフル回転させ思い付く場所を数ヶ所とひょっとするとこの時期はまだ人が来ないかも知れないという場所を告げると感謝の言葉と共に電話が切られた。現状の理解できていない俺は受話器越しに一定のリズムを刻む機械音に耳を当てたまま呆然としていた。

「なんだってんだよ…」