じょじょ四部 | ナノ
仗助のお祖父さんの葬式から数日、毎日の様に来てきた仗助はぱったりと姿を見せずにいた。まぁ、お祖父さんが死んだんだもんな、あの朋子おばさんも泣いてたし、とも思うが、春休みから一日も欠かすことなく見ていた顔が、ある日を境に急に、というのには頭の中に変な蟠りを残さないわけがなかった。もしかしたら自分は押してだダメなら引いてみろ作戦に弱い質なのかもしれない。かといって、わざわざ自分から仗助の所へ行くのは自ら巻き込まれに行っている様な気もして、それはそれでダメな気がする。この間真っ白いコートの男を見かけた。それが空条承太郎であるかは定かではないが、仗助の祖父が死んだことで、本編が始まっているのは明白であった。そんな今仗助の所へ向かうのは高確率で巻き込まれることは必至。俺は何をすべきか、何もすべきではないわけだ。
カフェドゥ・マゴへ行きたい所だが、カフェドゥ・マゴは確かわりと高頻度で本編に出ていたはずだし、岸辺露伴とかも見掛けそうでこわい。岸辺露伴はただのイメージでしかないが。
そう思い、自分のアパートの近所のそこまで大きくはない公園へストレス発散気分転換に来たのはいいが。まさか、そこに岸辺露伴がスケッチに来ているのは想定外の予想外だ。イメージは所詮イメージでしかなかった。しかもばっちり公園へ足を踏み入れるところを見られてしまったのでここで引き返すのは返って怪しい。いいや、公園なんて誰だって来る、サラリーマンだって子供だって来る、俺だって来る、何もおかしなことはない、寧ろ堂々とすべきなのだ。先ほど公園へ来る前に買った缶コーヒーを持って俺は自然な動きで岸辺露伴と離れたベンチへ座った。離れた、とは言ってもそこまで大きくはない公園、どこのベンチへ座っても公園全体が見渡せるようになっている。つまり、岸辺露伴は俺の視界にばっちり入っているわけだし、更に言えば岸辺露伴の視界にも俺はばっちり入っているわけだ。が、何も問題はない。俺はプルタブに指を掛け缶の飲み口を開け、苦くて黒いそれを一口、二口と喉へ流した。うちへ帰ったら再提出をくらったレポートをまた書き直さなければならない。
そう考えると憂鬱で溜め息が出た。

「オイ」

何か問題がございましたかね、ええ。
声のした方へ目を向けると本当に思ったよりも近くに岸辺露伴の顔があって驚いた。な、何でしょう、驚きを隠さず答えると、端整な顔立ちが、つまり、俺にとって都合の悪い方に歪んだ。

「僕の前で随分と辛気くさい溜め息を吐くじゃあないか」
「ええ、はぁ、スミマセン」
「僕が今何をしているか分かるか?スケッチだよ、この公園の子供が遊具で遊んでいる風景、それを描いているんだよ。こんな賑やかな場所で溜め息なんか吐くなよなぁ、こっちにまで辛気くさいのが移りそうだ、僕に移るだけならいいんだよ、いや別によくはないけどな、問題はその辛気くさいお前が僕のスケッチの画面に入って来てるって事なんだよ」

これ、絶対、長くなる。そう思った俺は再度口を開こうとする岸辺露伴を遮るように口を開いた。

「ああ、あの、言いたいことは分かりました俺が、この場から居なくなればいいんですよね、大丈夫ですこれ飲んだら、いや、もう入ってないんで、すぐにでも、すぐにでも俺は家に帰ります」

缶コーヒーは実はまだ少し残っていたがこのまま絡まれるよりはこの残りを捨ててでも早急に帰りたいのだ。
未だ何か言いたげな岸辺露伴を残して俺は足早に公園から出て、まだ中でちゃぷんと音を立てたコーヒーを歩みを飲み干してゴミ箱へ捨てた。
とんだ気分転換になった。