古いの | ナノ
こんなことを言ってしまうのは大変あれなのだが、オレの彼女は大概の気違いなんじゃないかとオレは思う。いや、普段は普通にしてるし、何の問題もない。ただ、オレのことに限って名前は何というか、よく分からないことを口走る。

「ねぇ晴矢」

そら来た。今度は何だ。


私は私が気違いじみていることをおおよそ自覚をしているつもりではいる。普段はわりかし普通にしているつもりだ。今までに変な顔をされたことはないから“普段”の私は普通にできているのだろう。外面はいい方だ。気違いじみているのは晴矢の前だけ、そう思う。いや、晴矢の前と言うか、晴矢に関してだけ、と言うのか。

「ねぇ晴矢」

話し掛けると晴矢はこっちへ向いて
「今度は何だよ」と呆れたように言った。毎回のことに呆れながらも話を聞いてくれる晴矢はとても優しいと思う。そんな晴矢が私は好き。だから、
晴矢の手をきゅっと握って腕に擦り寄った。

「晴矢と一つになりたい」



“晴矢と一つになりたい”
名前はそう言ったか?
オレはキョトンとして腕に擦り寄ってきた名前を見た。
どういうことだ。いつもならば突拍子もないこと、いや、今の言葉も随分と突拍子もない言葉ではあるが、いや、いやいや。一つ、一つってあれか。そういうことか。ぐるぐると色んな事を考えて、オレなりにひとつの結論に辿り着いた。と同時に頬が自分の髪と同様に紅くなる。別に、そういう事に興味がないわけではないし、むしろ興味津々と言っても過言ではないだろう。オレだって健全な男子中学生だぜ。名前がいいなら今すぐにでも、とか、思うわけで。

「いいのかよ」



いいのか、って晴矢は言うけどそれは私のセリフだと思う。
晴矢と一つになりたい。肉も神経も骨も、細胞の一つも残らず、晴矢と一つに、晴矢の中で生きたい。



「え…?」
「…え?」




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