古いの | ナノ
これの速水くん視点


実は、俺は隣の席の名字さんに好意を持っています。実は、なんて言ってもどうやら俺はそれが顔や行動にありありとあらわれているらしく、何故かクラスのほぼ全員、周知のことになっているらしい。まぁクラスの人が知ってるなんてこうなったらどうだっていいんです。知ったこっちゃないんです。ただ、俺が思いを寄せている彼女がこのことを知っているのか、そしてどう思っているのかが問題で。正直隣の席になれたのはラッキーでした。ラッキーでしたが、

「(っ緊張して、上手く字が書けない)」

本当に情けないとは自分でも確かに思う。それでも指は自分の意志に反してガタガタと思った通りに動いてくれなかった。
あぁ、もう本当に、こんなことを名字さんに知られてしまったら…!
一人持ち前のネガティブ思想に浸っていると名字さんとは反対の席の男子からつん、と突かれた。

「…なんですか?」
「な、名字さっきから速水のこと見てるぜ」

そんなバカな。

「そ、そんなわけないじゃないですか、か、彼女が、俺を…?」

ちら、と名字さんを見るが、名字さんは頬杖をついてぼんやりとただ前を見ているだけ。見ていたという確証はない、けれど見てないなかったという確証もない。

「ぁ、あり得ないですよ」
「じゃあ聞いてみろよ、本人に」
「そっ、そんな!ぜ、ぜぜ絶対むりですっ!」

本人に聞け、だなんて、名前さんに「俺のこと見てました?」などと唐突に聞けと言うのか。そんなこと俺には絶対むりだ、第一にもし違いでもして、なんて自意識過剰なやつなんだと名前さんに思われるだなんて、あぁ考えただけでも…!
ころり、視界の隅で白い塊が転がった。
消しゴムだ。
思わず身を屈めて手に取ると、名字さんが「あ、」と小さく声をあげた。もしかして名前さんの。

「はい、落ちましたよ」

なるべく自然に微笑んだつもりだけど、本当にそうだったかなんて実際はまったくわからない。

「あ、ありがとう」

名字さんの手の平に消しゴムを握らせると、少しだけ俺の手と名字さんの手が触れた。途端に、俺の顔はいきなり熱を帯びてどうしようもなくなってしまって俺は不自然に前を向いてしまった。

この赤い顔の意味が君に届けばいいのに




届けばいいのに
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -