古いの | ナノ
隣の席の速水くんはとても愛らしいと私は思う。友達に言うとえーだとかあり得ないとか顰蹙をかってしまうが私はそう思うのだ。
例えば、そうだな。
ちら、と隣を盗み見た。速水くんは黒板に書かれた言葉を必死に書き写していた。更にノートをのぞき見ると筆圧の弱い小さな字とイビツな図が白を埋め尽くしていた。
この気弱さが滲み出る字とか、それを書く細く骨張った指だとか、繊細なとことか。
長く見つめて目があっても気まずいので前を向くと速水くんの私とは反対の席の男子が何か話しかけた。俺を…とか…あり得ない…とか絶対むりですとか、ボソボソと会話の断片が聞き取れるものの肝心な内容は聞き取れない。会話も気になるけど、ほら、気が弱いのに一人称が『俺』なとことか、そのくせ敬語を使うとことか、何だか、言葉にできない思いが胸を掴んで離さない。きゅん!なんちゃって!
こつんと私の消しゴムが手に当たってころりと床に落ちた。あ、と転がった消しゴムを拾おうと屈んだ先に消しゴムは細長い指に拾われてしまった。

「はい、落ちましたよ」
「あ、ありがとう」

はにかんだ笑みで速水くんは私の手の平に消しゴムを握らせた。わ、わ、速水くん優しい!速水くんと手触れ合っちゃった、手、あったかかった!
嬉しいような恥ずかしいようなで多分私の顔はちょっと赤い、と思う。ちらとすぐに前を向いた速水くんを見るとおそらく私以上に耳が真っ赤になっていた。

ほら、こういうところが愛らしい!


速水くん視点


隣の席の速水くん!
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