古いの | ナノ
たった一年だと思っていた。
たった一年待てばひとつしたのあいつがオレを追いかけて武蔵野に入学し、オレを追いかけて野球部に入ってマネージャーになるんだと思っていた。小学校からへばりつくように一緒にいた名前、中学も一年遅れて同じところに入学して、どうせ高校に上がっても同じようになると思っていたんだ。
高校に入って二年、新入生入場の列に名前の顔はなかった。その時は見逃したのかと思ったが部活に新たに入部してくるなかにも名前の顔も名前もなかった。
なんだよ、あいつ、野球部マネージャーになるんじゃねぇのかよ
着替えの途中ボソリと呟いた言葉は隣にいた秋丸に拾われた。

「あいつ、って名前ちゃん?」
「以外に誰がいるんだよ」

イラついたように言葉を投げるとさして気にした様子もなくまぁ、と声を漏らした。ほんと榛名は名前ちゃんが好きだなぁと言って(べっつにそんなんじゃねぇよ!)それから、少し考えたようなふりをした。「そういえば」

「名前ちゃん高校はここじゃないとこ行ったんじゃなかった?」

秋丸の言葉に思わずベルトを止めようとする手が止まった。ズルリとズボンが落ちたがそんなことよりも平然と制服に着替える秋丸は何を言った?
は、何それ冗談だろ、だってオレ、聞いてない、えっ、てか何で秋丸が知っててオレが知らないわけ、は?意味わかんねぇ、どうゆうこと?

「あれ、榛名名前ちゃんから聞いてない?」
「…聞いてねぇよ」

ぼんやりと落としたズボンを拾い着替え直し、制服にだらしなく着替え先輩方に適当に挨拶して、部室を出た。後ろで秋丸が制止をかける声を発していた。
着替える最中の会話を察するに秋丸は名前から直接聞いたような口振りだった。
知らなかったのは多分オレだけだ。

「クソッ!」

一年以上離れるなんて考えてもみなかった、オレがプロになっても、ジジイになっても、あいつはずっとオレにずっとくっついてくるんだと、勝手に思ってた。
あいつが居ないことがこんなに淋しいものだとは思わなかった。




愛しいヒナは旅立った
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