自身の細い小指の付け根を優しく擦りながら見知らぬ彼女は俺に向かって言った。
赤い糸を探しているの。
赤い糸、って、あれか、運命の人と繋がってるって言う小指に絡まった見えない糸みたいなあれか。
“赤い糸を探している”?あぁ、もしかするとこれは彼女の口説き文句のようなものなのか。なるほど、女性の誘いを断る程、この志摩廉造、非道な男とちゃいますよ。
「へえ、赤い糸、それやったら俺と結ばれてるんとちゃいますか。」
ぴっと小指を立て、息をするように口から言葉を吐き出し自分より幾らか背の低い彼女の肩を抱いた。俺の言葉、あるいは行動に彼女の正解があったようで、彼女はにこりと口角を上げて微笑んだ。よく見ると俺好みのかいらし顔してはる、うん、ええ掘り出し物ゲットや。
「ほな、お名前をお聞きしても?」
「名字名前よ」
後日、いつの間にか俺の前から消えた名字さんは別の男と腕を組んで歩いていた。
どうやら彼女の赤い糸は俺とは繋がっていなかったらしい。
俺の赤い糸は誰と繋がっているんだろう。
赤い糸探し