「いや、あの、ちょっと、い、市原」
「悪いけど、逃がす気ないから」
ギッと意味深にベッドのスプリングが悲鳴を上げた。止めてよ、変な雰囲気醸し出さないでよ。私の思いに反して、私と市原を乗せたベッドは市原の四肢を動かす度にギ、ギと鳴いた。そうしてる間にも市原はちょっとずつ自身のベッドを鳴かせながら、私に覆いかぶさって逃げ道を塞いでいく。市原の左腕が私の顔の横に置かれた。
私は何を思ってこの腕が野球をする為のものだと信じたのか、何を思って私の足の間ににじりこむ、この足をベースを踏む為のものだと過信していたのだろうか。市原だって、男だ。そういうことにだって興味あるし、一日中野球のこと考えてるわけじゃない。練習で疲れた夜中でも一人ナニとかしちゃったりしてたりするんだ。
首筋にねっとりと市原の舌が這い、ひっと息を吸った。このままじゃ流される。
「ぃ、いいいちはら」
「んぁ?」
べろ、と鎖骨辺りを舐め上げ市原は顔を上げた。その時の市原の顔がどうにも煽情的で、なんだか、流されたっていいんじゃないか。
「市原、キスして」
流されてしまえ