古いの | ナノ
秋、文化祭。
オレのクラスは多数決により圧倒的な女子の支持で、演劇を体育館のステージで行うという何ともベターでありがちな演目に決まった。当然演劇なんてどうでもいいと考える男子は三分の二くらいいるし(いや、もっといるかも)、勿論やる気だって皆無だ。オレだって面倒だと思ってる。やっぱり当然の如く、男子の大半は大道具へ流れるわけだが、三分の二が大道具というのはさすがにまずい。そこで、ウチの学級委員長は係などを幾つか作り何人かが大道具、何人かがその他音響、何人かが役、と平等になるようくじを作った。ここでなんとなく予想のつく奴もいるだろう、オレも予想はついた。
オレは大道具係からあぶれたのだ。
大道具係最後の一人に選ばれたマックスがニヤニヤと笑っている。あの野郎。
まあまだその他音響の係も残っている。大道具よりは面倒に思えるが、役に当たるよりは幾分かはマシだろう。きっとそう思ったのが間違いだった。
オレはその他音響からもあぶれた。
ああきっと今日の占いは最下位だったのだ。だからこんなにもついていないのだ。その他音響に当たった風丸が安堵のため息を吐いた。マジ、クソっ…。
残るは役、役でもちょい役ならまだマシだ、望みはある。とか考えてるとどうせ主役の王子役とか引いちまうんだよな。経験上そうなんだ。はーっと重いため息を吐いて配役の書かれた黒板を見た。女子は大体決まったようで、女の役は殆どが埋まっていた。

「(姫役は…まだ決まってないのか、)」

ずらっと女子の配役に目を通したところで、女子のグループから名字の声が弾けて、他の女子のわっと盛り上がる声が上がった。グループの中心の女子が黒板へ名字の名前を姫役の下に書いた。どうやら姫役は名字に決まったようだ。

「(名字、が、姫…)」

ツンツンとマックスがオレの肩を突いてきた。なんだよ。マックスは声を潜めてオレの耳元でボソボソと言った。

「半田、王子役、立候補しなよ」
「はぁ?何で」
「何でって…。あのねぇ、ボクが気付いてないとでも思ったの?」
「だから何だよ」

マックスははぁ、と呆れたようにため息を吐いた。だから何!

「半田、名字のこと好きだろ?」

「はああ!?」

いきなりなマックスの発言にオレは驚いて、ガタンと席を立ち上がってしまい周りの視線を集めてしまった。マックスはうるさっと言いながら耳を塞いでいる。周りに何でもないと伝えるとさっきのようにざわざわとしゃべりだした。
オレは再び声を潜めてマックスに顔を近付ける。

「…何で知ってんだよ」
「本人と円堂以外はみんな知ってると思うけど?」
「はぁっ?うそっ」
「鈍いからね、二人とも」

けらけら笑うマックスを余所にオレは顔を真っ赤にしてうなだれた。みんな知ってるって、どんな羞恥プレイだよ。
いや、ポジティブに考えろ、みんなが知ってるならみんなが協力してくれる可能性だってある。むしろそっちのが割合としては高いんじゃねぇの?
ぐっと拳を握って決意を固めると、学級委員長がくじで役を決めると言った。これは、委員長がくじに細工をしてくれているにちがいない…!

前にあるくじの箱にまだ決まってない男子が順番に並んだ。着々と脇役は埋まっていくが、王子役は未だ空欄だ。まさか、これはきたんじゃないか…!?
順番が来て、箱に手を伸ばし紙を取って列から外れる。
胸の鼓動を押さえて、ぴらと二つ折りにされた紙を開いた。



村人B



「は、」
「どうしたんだ半田」

予想外の配役にほうけているとくじを引き終わった豪炎寺がオレのくじを見て言った。

「村人Bか、よかったじゃないか、セリフ少ないぞ」
「あぁ、そうだな。豪炎寺は?」

豪炎寺がオレは、と言ったところで委員長がオレと豪炎寺のくじをを取り、黒板へ名前を書いていった。

王子…豪炎寺

女子の歓声がわっと聞こえた。


所詮王子にはなれない
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