古いの | ナノ
タイさんから投手に抜擢されて早半年が経とうとするオレには悩みがある。それは野球部からの過保護っぷりだ。(特にマネージャーの名前からが、何ていうか…一番ひどい)
投手として大事にされてんのは分かるし、オレが必要とされているようで嬉しい。尚且つそれがオレの好きな名前からなのはとりわけ嬉しい。でもなぁ…。

「(オーバー過ぎなんだよなぁ…)」

ものには適度ってもんがあって、特に名前はオレに格別過保護だ。オレにカッターは絶対触らせない、なんてのはかわいいもので、この前は指切ったらいけないからとノートに触らせてもらえなかったりもした。流石にそれは授業が受けられないということで断固として阻止したが。
ふぅ、とため息を吐いて先程先生に頼まれた段ボールを抱え直した。
何か、日常生活で重いもん持つのも久し振りな気がする。いつもは重いもんは率先して周り(というか名前)が持ってっちまうもんなぁ。男としては面目丸潰れでかっこわるいけど。やっぱ男としては、好きな子が重いもん持ってふらふらしてんのを助けたいとか思うんだけど。

「(なんて、今の状況じゃどーシュミレーションしたって、名前とじゃ立場が逆になるんだけどな)」

曲がり角でよ、と呟いて段ボールを抱え直したところで、反対から来た名前と鉢合わせした。

「わ、あ、名前、」
「あ、イッチャン!そんな重そうな段ボール持っちゃダメだって!貸して、私が持つよ」
「え、いや、あ、」

オレが突然現れた名前に戸惑ってあたふたしていると、名前はオレの腕から段ボールを攫って、イッチャンはウチの大事な投手なんだからと鼻息を荒くしながら言った(大事な投手、…ね…)。くるっと名前は進行方向を変えて、数歩進んで、上半身だけをオレへ向ける。

「これどこ持ってくの?」
「向こうの、準備室」

向こう、と指差したのは廊下の反対に位置する教室。遠いなぁ、と呟いて名前は再び歩きだした。多分、名前じゃなくて例えば野球部員だとか別のどうでもいい女子なら、ここで「後頼んだ」とかなんとか言って教室に戻るんだろうが、なんてたって、オレは名前が好きなわけだし、少しでも長く一緒にいたいと思うのは当然の摂理だと思う。何歩も前を歩く名前の後ろを少し大股で歩くと簡単に隣へ追いついてしまった。こういう時、名前が女の子なんだ、なんて柄にもなく妙に意識してしまう。
途中、6組を横切る時パッと沢達が窓から身を乗り出してきて、俺たちを見た。

「なんだ、名字またイッチャン手伝ってんの」
「名字はイッチャン大好きだからな」

はははは、と笑う二人に名前ははぁ!?ばっかじゃないの!沢のアホー!とキャンキャンと吠えた。
沢達はウチのマネジはおっかねぇなと言って教室の奥へけらけら笑って逃げていったが、そんなことよりも名前が気になった。
名前はまったく、中学生じゃないんだから、と言ってさっさと沢のクラスを通りすぎて行った。その横顔の頬が少しピンク色だったのは、オレの見間違えなんかじゃないと思う。

「(え、は、何それ、期待して、いいってこと)」





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