古いの | ナノ
(音村の彼女設定)


朝の占いで一位だった。
家を出るとき靴のかかとを踏み潰さずに履けた。
前を通るとよく吠える犬に吠えられなかった。
今日は朝から何かとついてて、きっと学校に着いた後もまだまだいいことがあるんだろうとふわふわとした足取りで校門をくぐった。

全然いいことなんてなかった。
教室に入った瞬間、頭が真っ白になった。俺の目線の先には髪が肩につくかつかないか程度に短くなった名前。愕然とした。
あれ、昨日まで長かったよな。え、何それ。あぁ、そっか別人、別人。赤の他人。ちょっと、そこの人、そこ名前の席なんだけど。
違う違うと思いたい俺を知ってか知らずか、(いや知らねーんだと思うけど!)その席に座る人物に話し掛ける女子。「わぁ、名前髪切ったんだー」…おわった。
さっきまでのふわふわとした足取りが嘘だったみたいに酔っ払ったオヤジのようなふらふらとした足取りになって、俺は自分の席に座った。俺の席は名前の真後ろ。
ガタン、と音を立てて座ると、名前は俺に気付いたみたいで後ろを向く。


「はよー、条介」
「おぉ、はよー」

「髪、切ったんだな」
「んーそうそう」


あぁダメだ、気分が沈みすぎて何も喋る気しねぇ。
名前もそんな俺の雰囲気を感じ取ったのか不思議そうな顔をして前を向いた。
その時揺れた短い髪がなおさら俺の心を傷つけた。
なぁ、知らないと思うけど俺は名前の風にさらさらとなびく長い髪が好きだったんだ。何で短くなんかしたんだよ。
窓から入る海風がふわりと名前の髪を揺らした。


(くそ、音村め、)



海風
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