古いの | ナノ
暑い、一言思った事が気付かぬうちに口から零れた。言おうと思って言ったわけではないのだが、隣に居る彼女はそうは思わなかったのだろう、うるさい言ったらもっと暑くなる、とピシャリと言い放った。
ジリジリと日が照りつけアスファルトはもうフライパンの底のような感じだ。いや、まあ触ってないし触りたくないから知らねぇけど。なんとなく遠くの方がゆらゆら揺れてるから相当な熱を持ってるんだというのは大体分かった。ああ、尚更触りたくない。

「半田、」

ふいに1mあるかないか位の隣を歩く彼女が俺を呼んだ。…何か彼女ってと俺と名字が付き合ってるみたいだなぁ。(……ない…。いや、ありか?…名字が、俺と…)思って頭を大きくふった。暑さで頭いかれたな。名字?ねぇよ、ムリムリ、超ありえない。名字と付き合うくらいならこのアスファルトで丸焼きにされた方がマシ。や、でも死ぬ位なら名字と、…あれ、何考えてたんだっけ。

「半田、」
「何だよ、さっきから」
「暑い」
「…」

お前さっき余計暑くなる的なこと言ってなかったか。矛盾してんぞ。
ちら、と横目で名字を見て、何故かドキ、とした。うなじに汗で髪が張りついてやけに、色気ってのが…。あーダメだ、真剣に頭イってる。名字に、色気とか、そんな。

「…半田」
「、ぁんだよ」
「コンビニでアイス買ってこう」

悪い案だとは思わなかった。いっぺん入ったら出ずらいなぁと思いつつも、フラフラとコンビニへ向かう名字の後ろをフラフラとつられるように歩いて行く。


ガーッという音とピロピロという機械的な音が続いて鳴った。それと同時にぶぁ、と冷えた風が俺と名字を包む。俺は思わず声が出そうになったが、息をおもいっきり吐いてそれを止めた。
そこでようやく気付いた。俺、アイス買えるような金あったっけ。いや、ない。
俺がそんなことを考えてるうちにも名字はサッサとアイスの方へ歩いてアイスを選んでいる。

「半田、アイスどれにする?」
「あー、俺いいや」
「何で」
「…金、ねぇし」

少しは察しろよ、何かあれだろ!と内心思ったが名字は気にする様子もなくふーんと返事だけした。
ああ、俺のことは気にしないんですね、お一人で食べるんですね。何だこのやろう。俺にも少し位気ぃつかえっての。
名字はガサガサと気に入ったアイスを一袋もってレジへ並んだ。
やっぱ一人分かよ。や、別に奢ってほしいわけじゃないけど。
お金を払い終えた名字と並んで店を出る。外に出た瞬間生暖かい空気が俺が進もうとする足を止めようとする。あーだからコンビニ何か入るんじゃなかった。心の中で悪態をつけながら重い足を進める。

「あ、待って」

隣から離れてゴミ箱へ走った名字はどうせアイスでも開けるんだろう。はーあ、思いやりのない

「はい」

女。
前言撤回。すっげぇ優しい女の子がパピコを半分くれた。ありがとうスゲェマジで感謝。

「よし、染岡達が待ってる。早く行こう」
「、おう」

肩に掛けたカバンを掛けなおしてパピコをくわえて歩きだした。
こんな彼女もいいかもとか思った俺の頭はもうどうしようもないくらいにおかしいようだ。






暑さにやられた
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