古いの | ナノ
幼なじみの両親が離婚したと昨日の朝、その幼なじみ綱海条介から知った。でも、私は驚きはしなかった。それは一昨日、私の両親が離婚していたからだと思う。今思えばその日だって私は大して驚きや悲しみは感じていなかった。微笑んで向かい合う父と母をただ茫然と眺めていた。
両親が再婚すると昨日の夜知った。いやに早くお互いに再婚相手を見つけたものだと、茶碗を片手に唖然とした。そういえば、私はどうすれば、どこへ行けばいいのだろうか。
寝る前に条介とやりとりしたメールから、条介も似たような状況であることがわかった。行くところがなかったら二人でルームシェアとか本気で言ってんの。
朝、両親二人から今晩ウチに再婚相手を呼ぶと言われた。何それ修羅場?私にどっちについて行くか選べってことなのか。面倒なことになりそうだと考えて、昨日のメールを思い出した。もういっそ、そうなる前に条介とルームシェアでもする約束でもこじつけようか。


それから今に至る。

「よぉ、遅かったな」
「条介がなんで私の部屋にいるの」

玄関になんだかよく見る靴があったが、あれ条介のだったのか。てか待て、何で条介が私の部屋にいるの、何で私のベッドで寝てるの、制服ってことは学校から直で来たの。あー、もういい、どうでもいい。いやよくない。混乱と疲れが私の正常な判断を鈍らせる。ああ、うん、とりあえず。

「とりあえず、出ろ」
「へ?」
「出ろ。着替える」

親指を立てて廊下を指したが条介はえー、とパタパタ、いやバタバタと足を動かす。やめてよ、ホコリたつし。あと可愛くないよ、中三の男子がそんな。

「つか別にいいだろ」
「は、何私の下着姿を見ることが?」
「ばっか、下着姿が見れるならたとえ名前でも嬉し…、じゃねぇ!着替えだ着替え!」

何を焦っているのか、条介はベッドに沈めていた上半身をがばりと上げ、身を乗り出した。冗談なのだけども。
どさ、と床に鞄を放り投げ制服のまま私は椅子に座って条介の方へ向いた。

「何で私の部屋いるの?」
「リビングじゃ気まずかったから」
「…へぇ、何で?」
「あれ知らねぇの?」

条介がベッドの上で胡坐を掻いた。何が、と言えば、んーまあ知らねぇならそれはそれでいい、と曖昧にはぐらかされ、問いつめようとしたけれどもうまい具合に誤魔化されて結局うやむやなままに夜になってしまった。
私の母にご飯にするから降りてこいと言われ、条介とくだらない言い合いをしながらダイニングへ入ると大人が四人、先にテーブルへ座って雑談をしていた。

「何か蚊帳の外って感じだな」

条介がぼそっと言った言葉にうんと頷いて、所謂お誕生日席に用意されていた椅子に座った。条介は呆れた顔をして私の反対側のお誕生日席へ座った。今ここで事の事態を把握していないのは恐らくいや、間違いなく私だけであることに気付いた。暫く六人で食事をしていたが私には不安だけが募っていくばかりだった。
食事も一段落ついたころ、漸く私の母が明るい調子でこの状況を話しはじめた。混乱してうまく内容が飲み込めなかったけれども次に母がとった行動で大体の事が理解できた。

「私達結婚します」

そう言った母の抱いた腕は私の父の腕ではもちろんない。条介のお父さんだ。
私の父を見れば父の腕は条介の母に絡められている。
なるほど理解は出来た。
だが納得は出来ない。四人がいいなら結婚だろうと離婚だろうと勝手にしてくれて構わない。けど私はどうすればいいの、条介はどうするの。条介を見れば肘をついて携帯を弄っている。頭がショートしてしまいそうだ。そんなとき、ポケットに入れたままだった携帯のが動いた。あ、と思って開いたメールの送信者は目の前で携帯を弄っていた条介。目の前にいるんだから直接言えばいいのにと本文に目を通した。

From:条介
Subject:無題
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どうすりゃいいのか分かんねぇなら俺と住め
-END-

ガバッと顔を上げて条介を見た。無表情な顔が私をじっと見つめている。返事を待っている。無意識の中で私は微かに頷いた。のだと思う。条介がニカッと笑って私の手を掴んで廊下へのドアノブへ手を掛けた。

「じゃ、俺らも結婚するか!」

とんだママレードボーイだ。



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