古いの | ナノ
ペディキュアってどうにも塗りにくい。体を屈めて塗りながら思う。二度三度往復させるとムラができるし、はみ出るし。私の体が硬い、というのもあるかもしれない。あ、またはみ出た。親指は割りと塗りやすい、けど範囲が大きくてムラができやすい、小指は狭いからはみ出る量が多くなるし。あ、不器用ってのもあったなぁ。いっぱいはみ出たけどいいか。足をパタパタとさせて乾かすとずっと静かに雑誌を読んでいた荒北が怖い顔を更に怖くさせてこちらを見た。というより睨み付けた。

「くせぇ」
「しょうがないじゃない」
「しょうがねぇたってよ、つかきたねェ塗り方だな」

眉間にシワを寄せて荒北は簡易テーブルの上の除光液を手に取り蓋を開けた。

「おら、足」

だせ、と言いながら私の足をひっつかむと除光液をティッシュに染み込ませると、私が折角塗ったペディキュアを荒北は強引に擦り落としはじめた。

「あっ、ちょっとなにするの!?」
「いーから、まかせとけっての」

ごりごりと剥ぎ落とし終わると、私の手元からマニキュアを奪いキャップを回した。私の足を膝の上に乗せて筆を塗料に浸け、丁寧に足の爪を撫でる。自分で塗るときは思わなかったけれど、人に塗られると少しくすぐったい感じが新鮮で不思議だ。足先を少し動かすとはみ出るぞとたしなめられた。何だか執事にペディキュアを塗らせるお嬢様みたいな気分になって少し浮かれる気持ちだ。
しばらくして、ん、と荒北がキャップを閉めたことで、一通り塗りおわった事に気が付いた。

「おぉ」
「ま、お前が塗るよりはキレイなんじゃねェ?」

ニタリ、と血色のいい歯茎を見せて荒北は笑った。


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