古いの | ナノ
一目惚れなんてものはされるものでするものではないと思っていた。何せこの顔だ、この整った顔に女子の引く手あまたであることは言うまでもないだろう。ファンクラブだってある。そのこの俺がまさかあろうことか一目惚れなんぞする羽目になるとは「だからなんだっつーんだよ」
荒北はうんざりとしたような表情で俺の言葉を遮った。ムッとしたが、話を聞いてくれていた荒北はまだ優しく、マシな方だろう、一緒に聞いていたはずの真波なんか夢の中で、今ごろ坂を登っているんだろう。まったく真波は自由なやつだ。真波の隣にいた隼人がつついて起こすとふありと伸びをしながら欠伸をして目を覚ました。
「でェ?」
「ん?」
「尽八が女子に一目惚れして、それで?ってことだろ?」
あぁ、と一声。
そうだ、俺は別に一目惚れしたことを自慢したいわけではない。それはたしかに女子の方からすれば光栄なことだろうが、そうではない。何度も言うが、俺は一目惚れをした。校舎ですれ違った彼女とだ。それゆえに
「名前が分からん!」
腕を組んで言ってしまうと、荒北は眉間にシワを寄せたまま
はぁ?と声をあげた。
「見つけ出して聞きゃいい話だろォ?」
「それが出来んからこうやって全員に話しているんだろう」
決めポーズをして響かせると辺りがシンと静まった。なんだと言うんだ。
シンした部室に無邪気なハイという声と手があがり注目を集めた。空気の読まなさは天才的だな真波。
「東堂さんの一目惚れの相手は何年なんですか?」
前言撤回だ真波。よくやった真波。称賛の意味で深く頷くと荒北は「まさかそれも分かんねェとか言うなよ?」と口をはさんだ。
「大丈夫だ!流石にリサーチ済みだ!俺は普通にしていても少々目立つからな、気づかれないように後をつけてクラスを割り出すのは至難の技だった…!」
「ストーカーじゃナァイ」
呆れながら溜め息と共に言う荒北はこのさい無視だ。
「で、何年なんだ?」
隼人がしびれを切らして聞いた。よくぞ聞いてくれた。
そう、俺は彼女の後ろをまるで忍者の如く張り付いていたところ、俺はついにたどり着いたのだ!
「そう!彼女は一年生だ!」
再びポーズを決めると辺りはシンと静まり返った。
「じゃ、あとは不思議ちゃんに任せるとして、」
「俺らは退散とすっか」
「授業始まっちゃいますしね」
いそいそとスポーツバッグに荷物を仕舞い込んで部室を出ようとする荒北、新開、泉田に真波が「ええっ、俺も授業あるんですよ!」と慌てて鞄を引っ掴んで出ていってしまった。
「誰も協力する気はないのか!!」


とある部室でのとある会話
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