古いの | ナノ
※支離滅裂

暗い部屋の中で聞こえるのは自分の声と布の擦れる音、それから自分の排出するべき穴から聞こえる水音だった。

「…んっ!んっ!…んぅっ!」

出したくもない嬌声を自分の両手で抑えて、ソイツを睨み付けると、乾いた声で笑って、ボクの内腿に口付けた。ほんま、キモい。何やの、男の尻の穴なんて弄くって何が面白いの。口を開くと気持ち悪い声が溢れ出そうで、言いたい言葉の一つだって言えそうにないから、心の中で悪態をついて睨んでも、ソイツはにやにやと口角をあげるばかりで、何の効果もない。何でボクがこんな目に。

「はぁ、なぁ、御堂筋くん、ええかげん声出しや」

ソイツはボクが気持ち悪い声出さないのが気にくわないのか、そう言って、ボクの手にそっと唇を寄せた。イヤや、何で声なんて出さなあかんの、女みたいな、あんな声。出したって、きっとキミは女みたいだとバカにするくせに。ソイツがボクの中でぐるりと指を暴れさせた。思わず喉が仰け反って声が溢れそうになったが、咄嗟に唇を噛んで声を殺すと、ソイツは眉間にシワを寄せた。

「っんゔん゙!…あ、ぐっ」
「まったく強情やね、そろそろ次行きたいんやけど、御堂筋くんのここ、つらそうやから先いっぺんイっとこか」
「んんっ!っん゙…、…ふぅ、ん゙ん゙っ!」

ここ、と言ってボクのものをするりと一撫ですると、緩急をつけて扱いてきた。自分でするのと違う、遠慮のないスライドに意識が飛びそうになる。瞼をきつく閉じて迫る快感に耐え忍ぼうとしたが、ソイツにボクの窪みを抉られ、耐えきれずソイツの手の中に性をぶちまけた。その際声をあげなかったのは自分を自分で褒め称えるレベルだと思った。
肩で息を整えているとソイツは呆れたように深い溜め息を吐いて呟いた。

「そういうとこもかいらしんやけどな」
「は…ぁ、キモ…」
「へぇ、まだ口答えできるんや?もうダメそうなら止めたろ思うとったけど、いらん心配やったみたいやな」

どうせ思ってすらないだろう言葉を吐いたソイツは、先程よりもボクの力が弱まっているのをいいことに、口を押さえていた両の手を一纏めに掴み拘束をした。しもうた、と思ったのも後の祭りで、適度に慣らされた後ろの穴にソイツはボクのよりも大きなそれを突き立てた。

「あ゙あ゙あぁっ!」

油断していたというのもあるが、押さえのなくなった口からは声が堰を切ったように溢れ出し、部屋を埋めはじめた。
耳元でソイツが「ようやっと、声出してくれたな」なんて笑うから、唇を噛んで少しでも声を抑えようと試みたが頭が真っ白になるような快感の前にそれは徒労となってしまった。
ソイツがボクを抱き締めるようにして腰を振る度ボクの口からはひっきりなしに声が飛び出す。どこぞのアダルトビデオの女のようではしたないとは思うのだが、どうにも止まらない。こんなん、ボクらしくない。

「あ、…は、あ、あかんっ!ぃや、や!」
「はぁっ、翔っ」
「ああっ!」

どくん、と心臓が跳ねた。
この男はいつもそうだ、普段は御堂筋くん、御堂筋くんとザクと同じようにボクを呼ぶくせに、ボクの中に入った途端ボクのことを征服したように名前で呼び始める。ボクは、コイツのこういうところが、よっぽど嫌いや。でも、もっと嫌いなんがある。

「翔、翔、気持ち、ええっ?」
「あ、あっ、や、名前呼ばん、っで!あっ、おかし、頭おかし、なるっ!ああっ!!」
「翔、好きや」
「あっ!そ、な!んぅあぁ!」

こうやってボクの名前でを呼んで好きやなんて、のたまうところ。どうせ、常套句、いわゆるベッドマナーで、きっと、誰にでも言うてるに決まってる。きっと、ボクの知らんところで、知らん女にも言うてるに決まってる。そう考えると胸の奥がグルグルして気持ち悪い。いやや、何で他のヤツなんか見るの、他のハエどもなんかええから、ボクだけを見て欲しい。悔しいからボクやって、仕返しをする。いつのまにか外されている腕をソイツの首へ巻き付けた。

「ぁ、あ、名前っ、…はぁっ気持ち、えぇっ!」
「っ!」
「あっ、あっ!!や、…はぁ、ん!」
「はぁ、ぁ、あきら、好きって言って」
「あ、あ、すきっ、すきっ名前すきや!ぁ、あ、もっ、すきぃ!!」

ボクにはもう殆ど理性なんか残ってやしなかった。耳元で聞こえたソイツの言う通りにしてしまう位には余裕もなかった。ぽろぽろと目から涙か勝手に流れて、自分でも何が何だか分からなくなって、ソイツの唇にめがけて何度もキスをした。

「やぁっ、も、ぁっ、出るっ!出てまうっ!!」
「イってええで」
「いやっ、や、あ、やだ、イキた、な、っ!!あっあ!や、名前、名前っ!!」

どくりと自分の腹の上に自分の液を撒き散らしてイくと中でも熱いものが流れた。あぁ、イってもうたんや、と冷静な自分がキモいキモいと言っているのを脳裏に浮かべながら、ボクは静かに目を閉じた。
事後処理を終えたソイツがボクの隣に沈み、その震動でベッドが軋み目が覚めた。

「あ、すまん、起こしてしもうたな」

くしゃくしゃと汗ばんだ髪を撫でて、コイツはそうだ、と思い出したように口を開いた。

「御堂筋くん、最期イきたない言うたやろ、どうかしたん?どこか痛めてもうたかな?それとも気持ちよぉなかった?」

念のために言わせてもらうが、もうすでにボクの理性は完全に至る前と同等に戻っている。最中の心の中で思っていたことなんか言えるはずがなかった。てか、なんやねん、ボクだけを見て欲しいとか。キモキモキモぉ。

「…なんも」
「えぇー、うせやん、御堂筋くん、その顔はなんや隠してる顔やで」

ソイツは笑顔でツンツンとボクをつついてくる。嫌なわけやないけど、喧しく弾む心臓が煩わしくて、ソイツに背中を向けるように寝返りを打った。そうしてやればソイツはもうボクに話しかけたりはしない。後ろでやれやれとでも言いたげな溜め息が聞こえた。

「おやすみ、御堂筋くん、好きやで」

心臓を締め付けられるような感覚に、何喜んでん、キモいわ、と自分に悪態をついた。それ以上に素面で好きと言えない自分に本当に嫌気が差した。


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