古いの | ナノ
私の荒北象はずばりこんなだ、
一、目付きが悪い
二、下睫毛が半端ない
三、口が悪い
四、態度がデカイ
五、笑うとき何か企んでそう
その他諸々細かいところまで様々あるが、今あげるとするならこのようなものか、 とにかくやたら悪いイメージばかりで私からしてみれば、恐い、の一言に尽きる。まぁ、これはただの私のイメージであって、私自身は荒北と会話するどころか目を合わせたことすらなく、廊下で私がビクビクとビビりながらすれ違う程度の仲なので実際にそうであるかは定かではない。同じ委員会に自転車部の二年生、つまり彼の後輩にあたる子がいるが、彼に聞いてみると荒北は、口は悪いがいざというときにはヤル!男らしい。いよいよもって分からない。そんなに気になるならば話してみればいい、と友人は言うが聞けるなら既にそうしているし、もし、仮にできたとして向こうからしてみれば何だこの女、である。睨まれる凄まれる、恐い。
触らぬ神に祟りなし、とは違うような気もするが、どうせ私達は三年、クラスも委員会も部活も、果てには帰りの道すら違うのだから、きっと関わることなんて来るはずがない。私と荒北の中に何かが起こることはない。

そう、私はいつもそう思っていた。
ところがどうだろう、帰宅をしようとスクールバッグを肩にかけた私の目の前に佇むのは例の、あの荒北靖友本人ではないか。クラスの誰かに用なのかとも思いたいが生憎都合の悪いことにクラスに荒北と仲がいいと思しき人物はいないし、ましてや自転車部関係者もいない。が、きっと何か用があるのだ、このクラスメートの中の誰かに。確か、クラスの一部の女生徒がこの前荒北がカッコいいなどと噂をしていたのをぼんやりと聞いた気がする、そういうことなのかも知れない。ともかく、私には一切の関係はない。私がいつものようにビクビクと荒北の横をすり抜けようとすると強い力で腕を掴まれてしまった。何だ、何だというのだ、私は早く帰ってドラマの再放送を見るという使命があるというのに。誰が私を引き留めるのかと私の腕を掴む主に目をやった。

「さすがに無視は酷いんじゃナァイ?」
「!?あ、あ、あらっ、荒北っ」

変にひっくり返った声が出て教室の視線が私と荒北に集まった。私と荒北、何の組み合わせかと一部が騒ぎ、また一部では何事もなかったかのように帰り仕度を始める。私の友人は部活やらなんやらで早々に教室を出てしまって助けを求めることもできない。
荒北は腕を掴んだまま、私をどこかに拐っていく。廊下を進む間私の荒北イメージを知る知り合いにすれ違ったが、ポカンとした表情で見送られてしまった。階段を降りる際に泉田くんとますれ違い、微妙な顔でクスリと笑われた。
いい加減掴まれた腕が痛くなってきた頃、漸く荒北が私の腕を離してくれた。ずり落ちたスクールバッグを肩にかけ直して荒北の鋭い目と視線を合わせた。ひぃ、やっぱ恐い!

「…な、何でしょう」
「名字チャンさァ」
「(名字‘チャン’!?)はぁ」
「俺のことどう思ってるワケ?」

…どう、って、恐いって思ってるのバレてるのか。別に隠してたとかそういうわけではないが、さすがに本人に面と向かって恐いだなんて言えるわけない。し、本人もいい気分にはならないだろう。 じゃあ、なんと言えばいいのか、どこぞの女子よろしくカッコいいとでも言えばいいのか。そりゃ顔は悪くないとは思う、だからといってカッコいいかは当人の美的感覚の問題であって、つまり私の思うカッコいいは性格重視なわけで。
なかなか口を開かない私を見かねて荒北は自身の丸い後頭部をダルそうに掻きながら溜め息を吐いた。

「はぁー、べっつに怒んねぇよ」
「へ、」
「怒んねぇから、正直に言ってみ」

優しく諭すように言う荒北。表情には出さないが、私は驚いた、荒北がこんな優しい声を出すだなんて。私は荒北の怒声やら凄む声を遠くから聞くだけだったから、もしかしたら私が知らないだけで、本当は普段からこんな喋り方をする人なのかもしれない。もしかしたら、私が思っているよりも、ずっといい人なのかもしれない。

「あ、の、今までは恐いって思ってたけど」
「ん」
「今は、そんなことないかなー、って」

感じです。と小さく言うと、荒北はニヤリと笑った。その笑みはあの、何かを企んでそうな、そういった笑みだった。

「ヘェ、じゃあ、きっと」

「来週の今頃はきっと俺に惚れてるよ」

増えた。
私の荒北象
一、目付きが悪い
二、下睫毛が半端ない
三、口が悪い
四、態度がデカイ
五、笑うとき何か企んでそう
六、



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