古いの | ナノ
初めて見たとき怪獣のようだと思った。
縦にも横にも身体はでかいし、厚みなんてものすごい、声だってパパより低いし手も大きい、腕の太さなんて私の脚のふくらはぎくらいの太さはあると思う。
身長の低い私からすれば彼を怪獣と形容しても何らおかしくはない。
何が言いたいのかというと、私は彼が恐いのだ。
そんな彼が私の隣の席に陣取っているというのは、つまり、…つまり、…とりあえず愕然とした。

「たっ、たっ、田所くん」
「ん?」
「田所くん、何で、隣、さ、坂田くん、は?」

そうだ、隣の席は昨日の席替えで坂田くんになったはずなのだ。田所くんはもっと前の席で…。

「あぁ、センセイがお前が前だと後ろの席のやつが見えないとかなんとか言って、後ろの席じゃ目が悪くて見えないって言う坂田と替わってやったんだよ」
「あ、そ、そうなんだ」

うぅ、坂田くんに非はないけど、坂田ばか野郎!
チャイムが鳴って私は席に座らざるをえない。渋々大人しく座るが、物凄い威圧感。
端から見ればすごい図だ。体格差がすごい。
昨日一番後ろで喜んだ気持ちが見る影もないほどに一変している。神様私が何かしましたか。


私の隣の田所くん


「なーに、浮かない顔してるっショ」

足元に影が落ちて彼独特のしゃべり方を聞いた。
振り返って見ると緑色の個性的な髪と長い手足が私を見下ろしていた。

「巻ちゃん」
「お前にその呼び方許可した覚えないンだけど」
「いいじゃん、巻ちゃんかわいいじゃん巻ちゃん」

ぷーん、と前を向いて‘巻島くん’のあだ名を呼ぶと深い溜め息をついて彼は私の隣へ座った。
スラリとした手足が眩しかった。

「で、何」
「……田所くん…と、席が隣になった…」

私と巻ちゃんの間に沈黙が流れた。こういうとき天使が通ったって言うらしい。ステキね。欠片も思ってないけれど。
それきり言葉を発しない私を見て巻ちゃんはなんとも微妙な顔をした。

「まさかそンだけで落ちてたンじゃ…」
「死活問題だよ!私が田所くん苦手なの知ってるでしょ!」

巻ちゃんは再び息を吸い込み幸せを溜め息と一緒に吐き出した。ほら、私には見える巻ちゃんのところから幸せがすたこらさっさと逃げ出していくのが。彼は「田所が可哀想ショ」と呟いた。

「可哀想なのは私だよぉ!!」

私が半泣きで喚くと巻ちゃんはめんどくせぇとでも言いたそうな顔で私を見た。

「お前何がイヤなんショ」
「おっきいし、威圧感たっぷりだし、恐いし…」

「なんか食べられそう…」ポソリと溢すと巻ちゃんは吹き出し、ぶくくと笑いをこらえ始めた。
バカにされている。
割りと本気なんだよ。田所くんおっきいうえに大食漢だから私なんか頭から一口でぱくんなんて食べちゃいそうだよ。

「はぁー!まぁ…あながち間違ってないショ」
「間違ってないの!?」

私が頭を抱えると巻ちゃんはまた笑い始めた。
なんだって言うんだ!




「(お前、名字好きオーラヤベェ)」
「(そんなあからさまにした覚えはねぇ)」
「(よく言うっショ)」


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